何のための消費税増税か?/花づな列島復興のためのメモ(260)
政府は、来年4月に消費税率を現行の5%から8%へ予定通りに3%分引き上げる方針を固めた。
デフレ脱却の芽を摘むことがないよう、2%の増税分に相当する5兆円規模の経済対策を行うという。
東京新聞9月13日
こういうのを、「デキレース」というのだろうか。
「社会保障と税の一体改革」という大義はどこに行ったのだろう。
オリンピック招致が決まって、こわいものはなにもない、ということだろうか。
消費税を上げれば景気が悪くなることは当然である。
だから景気対策で、2%の増税分を還元する?
そもそも消費税増税は、財政赤字の中で、将来の社会保障のために行うものではなかったか。
将来世代にツケを回さないということだったのではないか。
消費増税には、現役世代に偏った社会保障の負担を広く分かち合い、子育て世代への支援を強める狙いもある。社会保障の安定、世代間の公平に向けた重要な一歩だ。
朝日新聞9月11日社説
それを、経済の後退を防ぐために、公共事業等の回すというのでは本末転倒というべきであろう。
ビル・トッテン 『課税による略奪が日本経済を殺した 「20年デフレ」の真犯人がついにわかった!』ヒカルランド(2013年2月)の冒頭に次のような記述がある。
1971年から1988年、日本のGDPは年間10%で成長した。
1989年から1996年には、日本のGDP成長率は年間4%まで減速した。
そして、1997年から2010年、日本のGDPは毎年縮小した。
一方、1989年4月には3%の消費税が導入された。1997年4月には消費税は5%に増税された。
つまり、3%の消費税導入により、経済成長率が10%から4%になり、5%への増税により、ゼロ成長になった。
もちろん、経済成長には他の要因も関係してくることは当然であるが、少なくとも現象的には、消費税と経済成長は相関している。
消費税増税の本質はなにか?
上掲書のp46に載っている図を見よう。
輸出上位30社の合計は、日本の総輸出額の52%を占めている。
その30社の従業員数は、日本全体の就業者のうちの1.3%に過ぎない。
30社の売上はGDPの13%に相当するが、法人税は3%しか納めていない。
法人税がGDPに占める割合は8%であるが、30社については売上に対する法人全の割合は1%に過ぎない。
輸出企業にとって、非常に優遇された税になっていることが分かる。
しかも消費税は輸出品には課税されない。
輸出企業が仕入れをするときには、消費税分を業者に払っているが、その分は税務署から輸出業者に還付される。
輸出戻し税である。
しかも、実態的には、輸出大企業は、中小企業や下請けに納品の際に、消費税を口実に単価を買いたたいている例も多いらしい。
上記を見れば、いくつかの疑問も氷解する。
1.景気に悪影響を与える消費税増税に経済界が賛成する理由
⇒2012年7月 5日 (木):経団連が消費税増税に賛成する理由/花づな列島復興のためのメモ(103)
2.アベノミクスが円安を誘導する理由
⇒2013年7月 2日 (火):円安は良いことか?/アベノミクスの危うさ(9)
3.デフレの要因
⇒2011年10月18日 (火):日本経済のクァドリレンマ/花づな列島復興のためのメモ(8)
デフレの要因については、消費税の導入の影響が大きいとは思うが、人口動態との関連性もあるとは思う。
⇒2010年10月25日 (月):人口転換理論とデフレ経済
税を支払い能力との関係でみると、大きく2つに分けられる。
A.累進税と比例税
B.逆進税
要は、累進的にか比例的にかはともかく支払い能力に応じて課税するか、支払い能力に無関係に課税するか、ということである。
消費税は、逆進税の代表である。
今さらではあるが、消費税法案を決めた時に、全体の税体系に関する議論が不十分だったように思う。
財務省を中心とするプロパガンダが浸透し、いずれにしろ消費税を上げることになるというムードに流されたのではないか。
その第一の責任は時の首相の野田佳彦氏にあるとは思うが、自公民は共同正犯である。
結果として自民党が圧勝して、昔ながらの景気対策と称する公共事業に大盤振る舞いになるとは。
社会の格差を表すとされるジニ係数の推移は下図のようである。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/11/blog-post_30.html
注)ジニ係数とは、主に社会における所得分配の不平等さを測る指標。係数の範囲は0から1で、係数の値が0に近いほど格差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味する。
安倍首相よ!
あなたは、格差が増大する社会を好ましいと考えておられるのだろうか?
消費税増税により、所得・富の格差は増大するに違いない。
それはいずれ経済活動を停滞させることになるはずでる。
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