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2013年9月15日 (日)

井上靖『シリア沙漠の少年』/私撰アンソロジー(27)

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井上靖は、『敦煌』、『楼蘭』などの西域を舞台とした小説で一世を風靡するベストセラー作家になった。
⇒2012年9月26日 (水):井上靖『氷壁』/私撰アンソロジー(16)
小説家ではあるが、22冊もの詩集を発行している詩人でもあった。
というより、井上文学の根幹に流れる詩情には、詩人としての資質と訓練があったと考えられる。

ここで描くシリア沙漠は、『敦煌』、『楼蘭』などで描いたシルクロードの“向こう”にあるエキゾチックな場所である。
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http://www37.tok2.com/home/tourfortwo/syria/guidepage.htm

上図で見るように、シルクロードの果ての砂漠地帯から地中海沿岸部に到る。
海外旅行者が増えた現在でも旅行者はさほど多くはないであろう。
その意味でも異域的であるが、中東が産油国として重要な地域であるから、わが国も大いに関係がある。

そのシリアに関し、アメリカのケリー国務長官とロシアのラブロフ外相は、アサド政権が保有する化学兵器について、国際機関による査察を行い来年半ばまでにすべての化学兵器の廃棄を目指す枠組みで合意したと発表した。
この合意により、アメリカなどによるシリアへの軍事行動は当面回避されることになった。
そのことは良いことであろうが、本質的な解決ではないだろう。

シリアを巡る勢力の構図は次図のようである。

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http://www.geocities.jp/teru_teru_funi/siria.html

複雑に絡み合っているので簡単には解きほぐせないだろう。
オバマ大統領も定見の無さをを露呈した感じで、影響力は低下せざるを得ない。
ジャスミン革命といわれたチュニジアの軍事政権の崩壊は、“アラブの春”を予感させたが、なお春は遠いのだろう。
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http://overrev21.blog67.fc2.com/blog-entry-268.html

それに、化学兵器はもちろんだが、核兵器廃絶の展望をどう描くか。
日本人としては、オウム真理教によるサリン事件により化学兵器の恐ろしさを世界に知らしめたが、ヒロシマ、ナガサキ、フクシマと核の恐ろしさを訴求し続けていく責務もある。

掲出の詩は、井上靖の散文詩集『北國』東京創元社(1958年3月)の中の一篇である。
後に『シリア沙漠の少年―井上靖詩集 (ジュニア・ポエム双書 (32))』教育出版センター (1985年8月)という題の詩集も出版されている。
静岡県の長泉町にある井上靖文学館が、開館40年に合わせ、銀の鈴社(神奈川県鎌倉市)に働きかけて『シリア沙漠の少年』が復刊された。

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