「嘘も方便」首相と日本の将来/花づな列島復興のためのメモ(264)
安倍首相はオリンピック招致のプレゼンで、福島原発事故の影響について、「状況はコントロールされている」「汚染水は港湾内で完全にブロックされている。健康問題は今もこれからも全く問題ないことを約束する」とスピーチした。
殆どの国民が、ビックリしたというか、そんなはずはないのに・・・、と思ったのではないか。
⇒2013年9月11日 (水):人災と不起訴の間/原発事故の真相(84)
私も一日本人として、オリンピック招致成功は祝福したいと思う。
しかし、安倍首相のスピーチは引っ掛かる。
折角のオリンピックに暗い影を落とすものと、敢えて言っておきたい。
安倍首相が、正直に、「福島原発事故はまだコントロールできているとは言えない。汚染水も相当量が外洋に流出している可能性がある」と語っていたら、招致は失敗に終わっていただろうか?
それは誰にも分からない。
しかし、私は正直に言うべきだったと思う。
たとえ招致できなくても、この国の将来にとっては、その方が良かったと考える。
「嘘も方便」という言葉がある。
解説を見ると、「目的を遂げるために、時には嘘をつくことも必要になるという意。 「方便」とは、仏教用語で、衆生を真の教えに導く為に用いる仮の手段のこと。」とある。
オリンピック招致という目的を遂げるために、「福島原発事故は、コントロール下にあり、汚染水はブロックされている」という手段(ウソ)が許されるということを意味しているか?
英語で相当する表現として、下記が挙げられている。
The end justifies the means.
(目的は手段を正当化する)
He that cannot dissembble know not how to live.
(偽ることのできない人は、生き方を知らない人である)
A lie does good how little a while soever it be believed.
(嘘は信じられる時間がどんなに短かろうと、役立つものだ)
いずれも肯定的であるといえよう。
だが、「目的は手段を正当化する」という命題は常に真か?
そんなことはあるまい。
少なくとも、目的と手段が「比べられる:comparable」ものでなければ意味があるまい。
オリンピック招致と原発事故の現状は、果たしてcomparableであろうか?
福島原発事故の現状をどう認識するか?
元東芝の原子炉格納容器設計者である後藤政志氏は、汚染水問題に関し次のような認識を示している。
http://blog.livedoor.jp/home_make-toaru/
つまり、実態がよく分かっていないのである。
一説によれば、メルトスルーした核燃料は、地下へ突き進んでいるらしい。
その状況すら分かっていない。少なくとも開示はされていないはずだ。
核燃料がマントルにまで達したら、果たしてどういうことになるのであろうか?
それよりも、先ず汚染水対策であろう。
水冷という方式自体が暫定的なもので、恒久対策としては他の方策で対処することが必要ではないか?
⇒2013年4月15日 (月):福島第一原発の汚染水は他に対策がないのか?/原発事故の真相(68)
⇒2013年8月22日 (木):福島原発事故の新段階/原発事故の真相(79)
⇒2013年8月23日 (金):政府は非常事態宣言を発するべき/原発事故の真相(80)
⇒2013年9月21日 (土):福島第一原発の全号機廃炉は当然だが・・・/原発事故の真相(85)
そもそも、水収支からして、水冷では限界があることは明らかではないのか?
⇒2013年8月 7日 (水):福島第一原発の汚染水の水収支/原発事故の真相(76)
⇒2013年8月17日 (土):汚染水対策の不安/原発事故の真相(77)
⇒2013年8月23日 (金):政府は非常事態宣言を発するべき/原発事故の真相(80)
オリンピック招致は喜ばしいことではあるが、招致という目的が原発事故の現状についてウソをいうという手段を正当化しはしない。
それが最高責任者の言葉だとすれば、この国の将来はどうなるであろうか?
目的が手段を正当化するという考え方は原理主義である。
原理主義は現実とは相容れないであろう。
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コメント
しっかりとした対応をして欲しいですね。
投稿: 運をコントロール | 2013年9月25日 (水) 01時22分