オリンピック招致と福島原発事故/原発事故の真相(82)
東京オリンピックが開催された昭和39(1964)年、私は大学の2年だった。
京都の下宿で、小母さんと一緒にTVを見ていた記憶がある。
遥かに遠い出来事であり、競技についても断片的なことしか覚えていない。
しかし、東京オリンピックが社会を大きく変えたという事実はしっかりとした記憶がある。
もちろん、東京に行く機会もなかったので、都市としての東京の変容を実感することはなかった。
しかし、オリンピック開会の直前に東海道新幹線が開通し、京都への列車の便は格段に良くなった。
入学試験の時はもちろんであるが、入学してからも帰省するのに東海道線(在来線)を使っていた。
貧乏学生であるから、夜行列車を利用することが多く、少し贅沢をする時でも準急だった。
最初は、新幹線がとてつもない贅沢に思えたが、次第に慣れて当たり前になった。
また、名神高速道路は、前年に一部開通していた。
クルマとは縁がなかったので利用する機会がなかったが、マイカーを所有している同じ学科の友人に乗せてもらって走行したのは、翌年ではないかと思う。
名神が全線開通したのは1965年7月であるが、京都から関ヶ原辺りまでをドライブしたような気がする。
いずれにしろ、計画して行動するというのではなく、何かの拍子に、「それじゃ行こうか」というのが常であった。
このようなインフラの整備は、日本社会の高度成長に拍車をかけることになった。
『時空旅人Vol.15 「日本戦後史」』(2013年9月号)に載っている図を引用する。
オリンピックの開催されたのは、上図の赤棒の年であり、こういう指標で見ればまさに別国というべきであろう。
現在、オリンピック招致活動がクライマックスである。
私は日本国民の1人として、2020年のオリンピックをこの目で見てみたいと思う。
しかし、一方で不安が拭えないのも事実である。
福島第一原発事故が収束のメドがついていないことである。
東京、マドリード、イスタンブールの争いとなっている2020年の夏季五輪開催地は、7日(日本時間8日未明)、ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会で、IOC委員約100人の投票で決まる。
そこで、原発の汚染水漏れ事故が、焦点になっているという。
5日朝、東京招致委の記者会見に日本を代表する新旧の選手たちが並んだ。事故についての最初の質問は元レスリング選手の馳浩衆院議員が答えたが、その後、司会者が「関連の質問がある人は後ほど広報担当者まで来て下さい」と質問を封じる作戦に出た。
http://www.asahi.com/national/update/0905/TKY201309050388.html
フェアプレイを訴求していたはずなのに、質問は後ほど・・・、というのではさまにならない。
海外メディアの目は厳しい。
東京招致委にとって、汚染水事故への海外の厳しい見方は想像以上だった。
「水や食べ物は安全」「住民は普通に生活している」「東京は全く問題になっていない」――。招致委は8月下旬、想定問答を作った。政府が3日、計470億円の対策を発表すると「これで説明できる」と余裕も見せていた。
だが、現地初の記者会見で海外メディアの質問6問のうち4問が汚染水対策に集中し、竹田恒和理事長は答弁に困窮。「厳しい。この説明では納得してもらえないのか」。招致関係者は国内外の温度差を感じた。
会見に出た海外の記者は「失望した」「意図を理解しない答え」と突き放した。東京と福島の距離を強調する姿勢に「東京だけ安全ならいいとも聞こえ、福島の人々への配慮が足りないのではないか」との声もあった。
http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/05/olympic_candidate_n_3876459.html
東京電力が5日、福島第1原発で汚染水漏れが起きたタンクの南側に掘った観測孔から4日に採取した水を分析したところ放射性物質を検出したと発表した。
タンクから漏れた汚染水が土壌に浸透し、地下水に到達した可能性があるとしている。
汚染水対策も新しい発想が必要ではないか。
にもかかわらず、がれきの撤去作業に使っている大型クレーンが、途中から折れ曲がり先の部分が地面に落ちるトラブルがあった。
核燃料サイクルが完結しない状態での原発の稼動は、トイレのないマンションでの生活に譬えられる。
同様の言い方をすれば、マンションのトイレが故障して汚い水が溢れているのに、直す道具が壊れたようなものである。
こんな状態で、客を招いていいものかどうか?
「政府が対応するから大丈夫」などといっても、不安は拭えないのが普通の神経というものであろう。
9月4日の9時過ぎ、鳥島近海を震源とする地震があった。
ゆっくり揺れる感じの地震で、同室で作業していた女性は、私に言われて「そう言えば揺れてる」という程度の体感であった。
遠隔でかつ深度が深かったため微弱な揺れであったが、福島第一原発の近傍で発生しないとは言い切れない。
今までに体験したことのないような豪雨や竜巻も頻繁に起きている。
日本列島全体が、異変の中にあるような感じもする。
大事が起きないうちに収束すればいいが。
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