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2013年9月 1日 (日)

関東大震災から90年に思う/花づな列島復興のためのメモ(255)

今日から、越中八尾おわら風の盆である。
高橋治さんの『風の盆恋歌』新潮社(新装版2003年6月は、私の愛読書の1冊である。
10年位前に八尾を訪れたことがあるが、すごい人出で身体不如意の現状では、再訪はムリであろう。

風繋がりというわけではないが、先日、評判になっている宮崎駿の『風立ちぬ』を観た。
零戦の設計者として有名な堀越二郎のエピソードと、堀辰雄の『風立ちぬ』『菜穂子』などの小説のプロットを合成したような内容である。
アニメの映画を観るのは久しぶりだったが、考えさせられることがいくつかあった。

最初の部分で関東大震災のシーンが描かれている。
堀越二郎は、1903年6月22日生まれだから、1923年(大正12年)9月1日に起きた関東大震災の時は、二十歳だったことになる。
1914年~1918年の第一次世界大戦が終わり、戦後恐慌に陥っていたところへ、震災が起きた。
多くの事業所が被災し、壊滅したことから失業者が激増した。
さらに震災の被害によって決済困難に陥る約束手形(震災手形)が莫大な額に上ったことから、震災直後の7日には緊急勅令によるモラトリアムが出された。
震災手形割引損失補償令が出されて震災手形による損失を政府が補償する体制が取られたが、その過程で戦後恐慌に伴う不良債権までもが同様に補償されてしまい、これらの処理がこじれて昭和金融恐慌を招いた。

それから、昭和初期の暗い時代までは、一瀉千里という感じである。
端的に言えば、関東大震災による不況が、軍国主義増長の1つの要因になったとも言えよう。

東日本大震災から2年半が過ぎた。
長く続いたデフレが、アベノミクスによって終止符を打ったのではないかと言われている。
私自身は、余り景気が良くなったという実感はないし、アベノミクスと呼ばれる政策体系に必ずしも得心しているわけではない。
⇒2013年5月29日 (水):アベノミクスの危うさ/花づな列島復興のためのメモ(221)

⇒2013年8月 9日 (金):1人当たりGNI150万円増は可能なのか/アベノミクスの危うさ(11)

一番単純な指標として、日経平均株価の推移を見てみよう。
Ws000000

第2次安倍政権発足時から順調に上昇していたが、5月23日に暴落して以降パッとしない。
消費増税の影響を検証する政府の集中点検会合が31日終了した。
有識者といわれる60人から意見を聴取し、そのうち7割超の44人が予定通り消費税率を引き上げることに賛成だった。
安倍首相がどう判断するかは分からないが、景気に悪影響を与えることは間違いないだろう。
税収が増えるかどうかも疑問であると思う。
⇒2013年8月19日 (月):消費税増税は財政再建に資するか?/花づな列島復興のためのメモ(252)

いささか理解に苦しむのは、メディア(新聞社)の姿勢である。

  政府が消費税増税の是非を判断するために有識者から意見を聴く集中点検会合で、日本新聞協会の白石興二郎会長(読売新聞グループ本社社長)が新聞を対象に「軽減税率」の導入を求めた。
   2014年4月の消費増税をきっかけに、新聞社の経営がさらに厳しくなることがあるとみられるが、許されてよいものなのか。
・・・・・・
 新聞を読む人は減少傾向が続いており、新聞各社は発行部数を減らしている。2000年以降は平成不況と少子高齢化の影響に加え、インターネットの普及などメディアの多様化にともなって、購読料と広告料による収益構造が不安定化した。中小の地方紙や業界紙の休刊、廃刊が目立ち、休刊に至らなくても、夕刊を廃止した朝夕刊紙も多い。
http://www.j-cast.com/2013/08/31182658.html

経営がさらに厳しくなるのは新聞社だけではあるまい。
政治権力と距離を置くことがジャーナリズムの基本ではないか?
政府にお願いをして、批判精神が保たれるのか?
夕刊を廃止しても、購読者は一向に困らない。

それにしても、東日本大震災、とりわけ福島第一原発事故は、収束どころか新たな段階を迎えている。
汚染水漏れが、なぜこれほど深刻な事態になったのか。
原発事故が発生したのは民主党内閣のときで、民主党内閣は原発事故の責任と対応をすべて東電に負わせたが、それが事態を悪化させてきた。
⇒2013年8月22日 (木):福島原発事故の新段階/原発事故の真相(79)
⇒2013年8月23日 (金):政府は非常事態宣言を発するべき/原発事故の真相(80)

安倍内閣は、政府が本腰を入れて取り組むことを表明したが、速やかに具体的な行動に入らなければならないだろう。

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