原子力市民委員会の緊急提言/原発事故の真相(81)
原子力市民委員会という組織が、8月28日付で、「事故収束と汚染水対策の取り組み体制についての緊急提言」を提出した。
私も、2011年12月16日の野田首相(当時)の「収束宣言」がマヤカシであること、東電には当事者能力が欠如していることについては再三触れてきたことなので、わが意を得た思いである。
⇒2011年12月17日 (土):フクシマは「収束」したのか?/原発事故の真相(14)
⇒2013年8月20日 (火):福島第一原発事故の“収束”は何時になるのか?/原発事故の真相(78)
サイトを見ると、原子力市民委員会(座長:舩橋晴俊・法政大学社会学部教授)は、今年の4月15日に設立された。
設立趣意書を抜粋する。
福島第一原発事故から二年が経過した。事故炉の安定の確保にはほど遠く、多くの被災者が故郷に戻れぬ一方、生活の再建の見通しも立たないという過酷な状況が続いている。
・・・・・・
2012年12月の政権交代を契機に、政治サイドでは、福島事故以前の状態への原状復帰、つまり大半の原発の再稼働、および建設中・計画中の原発の開発や核燃料サイクル事業の継続、更には海外への原発輸出といった志向が強まり、失効状態にあるエネルギー基本計画を改定し、そこに原状復帰の方針を盛り込もうとする動きが強まっている。
・・・・・・
ここにおいて重要になってきたのは、脱原発社会建設のための公共政策上の具体的道筋を、倫理的観点を盛り込みながら本気で考えることである。私たちにはその経験が乏しい。それは従来の政治・行政体制のもとで、脱原発が進むことはほとんどあり得ないと多くの人が考えてきたためである。しかし福島原発事故によってその状況は大きく変わった。
・・・・・・
以上のような状況をふまえて、このたび、脱原発社会建設のための具体的道筋について、公共政策上の提案を行うための専門的組織として「原子力市民委員会」を設立することとした。
・・・・・・
既存の「原子力委員会」は、原子力関係者による、原子力関係者のための組織として、原子力政策の企画・審議・決定を行ってきたものと、私たちは認識している。それに対して「原子力市民委員会」は、市民の公共利益の観点に立って、原子力政策の企画・審議・提言を行う点で、原子力委員会と大きく異なっている。
http://www.ccnejapan.com/?page_id=16
提言の内容の大要は以下の通りである。
1 事故収束作業における相次ぐトラブルと汚染水の漏洩が続いていることは、福島第一原発事故が収束していないこと、これまでの政府の事故収束についての判断は誤っていたこと、政府が責任のある取り組み体制を構築してこなかったこと、東京電力には事故収束と汚染水対策を進める能力が欠けていることを示している。・・・・・・
2 事故収束に当たる事業体をつくり、関連分野の専門家を集めて、汚染水に対する機動的対策を緊急に実施するべきである。・・・・・・
3 汚染水対策業務の遂行に当たっては、最適技術の選択を行いながら進めることとし、大型タンクの建設と既存の応急的、仮設的汚染水処理システムを耐久性のある恒久的な汚染水処理システムに更新していくこと、および実効性のある海洋への汚染水流出防止システムを構築することを提案する。
4 東京電力は、過去2 年半にわたって適切な事故処理も汚染水対策もできなかった。東京電力の法的な破綻処理や組織分割も検討されるべきだが、それに先立ち、まず、汚染水対策をはじめとする事故収束に当たる事業主体を独立させるべきである。さらに、東京電力の経営形態や法的位置づけについてのより根本的な見直しのために、「専門調査委員会」を国会に設置するべきである。
http://www.ccnejapan.com/
タンクからの汚染水漏れ事故について、原子力規制委員会は28日、トラブルの深刻さを示す国際原子力事象評価尺度(INES)を「レベル3」(重大な異常事象)に引き上げると発表した。
東京新聞8月29日
原発事故は決して収束していない。
むしろ事故後の中で、危険性は高まっているともいえる。
⇒2013年8月22日 (木):福島原発事故の新段階/原発事故の真相(79)
⇒2013年8月23日 (金):政府は非常事態宣言を発するべき/原発事故の真相(80)
私は原子力市民委員会の提言を支持する。
そして、速やかに提言が活かされ、真の収束が一刻も早く訪れるよう祈念する。
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