撤回では済まされない麻生副総理の言葉
麻生副総理兼財務相の発言が物議を醸している。
桜井よしこ氏が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」の7月29日の例会(テーマは「日本再建への道」)でのことである。
「ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから」
「そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでも最も進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ」
「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わってナチス憲法に変わっていたんですよ。誰も気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20130803/360421/?ST=business&P=2
参院選で圧勝し、桜井よし子理事長の団体ということで、身内感があって、気が緩んだのかあるいはホンネが出てしまったということであろうか。
麻生氏はすでに、憲法改正を巡ってナチスを引き合いに出したことについて、8月1日に撤回を表明している。
本人が撤回すると言っていることについて、あれこれ言及するのはどうかとも思うが、撤回すればそれで済むという問題でもないと思う。
麻生氏は、米国のユダヤ系団体などからの批判を受けて、ナチスを例示した部分を撤回し、あしき例としてナチスを挙げたと説明した。
しかし「あしき例としてナチスを挙げた」とするにはムリがある。
文脈が通らない。
まあ、もともと論理的な整合性など、意図していないのだろうが。
麻生氏は、「私の真意と異なり、誤解を招いたことは遺憾だ」と述べている。
では、真意はどういうことだったのか?
麻生氏は、「ワイマール憲法はいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気づかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と述べた。
素直な解釈は、やはり、憲法改正でナチスのやり方に倣えと主張している、ということだろう。
「手口」という言葉には、ニュアンスとしては、「悪事を成し遂げる際の手法ないしは手順」といったイメージがある。
どう無理に解釈しようとしても、「ナチスの手口を学べ」という言葉について、麻生氏の“真意”は伝わらないだろう。
麻生氏は、憲法改正について「騒々しい中で決めてほしくない」と話している。
撤回発言の中でも「落ち着いた中で静かに議論するという考えは撤回するつもりはない」と強調している。
何を言いたいのか?
批判的な意見が存在することを、「騒々しい」と決めつけているのではないか?
靖国神社の参拝についても、静かに参拝すべきだと述べていることを考えれば、参拝ありきということである。
それを併せて考えれば、改憲ありきということであって、反対は「騒々しい」ということになるのだろう。
憲法改正については、徹底的な国民的議論が必要であると考える。
むしろ騒々しいくらいの議論を巻き起こすべきではないか。
日本維新の会の橋下徹共同代表は、1日、麻生氏を擁護する文脈で、「行きすぎたブラックジョーク」との認識を示した。
「行きすぎたブラックジョーク」だったら、目くじらを立てるな、ということだろうか?
麻生氏が早々と撤回したのは、安倍政権が取り組もうとしている憲法改正や、集団的自衛権の解釈変更などの障害になりかねないと判断し、早期の「火消し」を図ったためとみられる。
参院選の結果でねじれが解消したばかりである。
こういう粗雑な物言いが、麻生氏が一部で人気を博す要因だとも言われる。
それにしても、「ナチスの手口を学べ」とは、それこそ歴史認識が問われるところである。
順調に進んできたように見える第2次安倍政権の躓きになり兼ねない発言のように思う。
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コメント
誰にも、特には気付かれることもなく、いつのまにか、第一党の意志をのみ反映した憲法に変えられてしまう、- - - そんなことがまかり通るような国に、進歩はありません。
国民を無能にしてしまうことになります。
私は、麻生さんは、漫画とインターネットに現を抜かす、アホな類の人間だと、憚りながら言わせて頂きたい、ご自分の程度に合わせてしか、人を見ることが出来ない、
無能な国民、ー ー 自分と一緒で、国民も皆無能、いつのまにか憲法が変わっている、それのどこがワルイの?、と、そういう風な考えなのだと思います。
投稿: 五節句 | 2013年8月12日 (月) 13時08分
五節句様
コメント有り難うございます。
「アベノミクスで株が上がった」となどと喜んでいるうちに、気がついたら大変な場所に来ていた、などということにならねばいいが、と取りこし苦労であることを願いつつ、本気で心配しています。
投稿: | 2013年8月13日 (火) 17時20分