識字率と革命/因果関係論(22)
革命という事象は、因果関係が複雑なものの代表といえるだろう。
「産業革命」「フランス革命」「ロシア革命」・・・
「革命」は、Wikipedia-革命では次のように規定されている。
革命(かくめい、英語: Revolution、レボリューション)とは、権力体制や組織構造の抜本的な社会変革が、比較的に短期間に行われること。対義語は保守、改良、反革命など。
「レボリューション」の語源は「回転する」の意味を持つラテン語の「revolutio」で、ニコラウス・コペルニクスの科学革命で使用され、後に政治的変革に使用されるようになった。また漢語の「革命」の語源は、天命が改まるとの意味で、王朝交代に使用された。
革命は人類の歴史上、さまざまな方法や期間、動機となった思想によって発生した。その分野には、文化、経済、社会体制、政治体制などがある(農業革命、産業革命、フランス革命、ロシア革命など)。また、何が革命で何が革命でないかの定義は、学者の間で議論が続いている。
まあ、革命という現象がそもそも一義的には定義されないのだから、因果関係の考え方自体もさまざまになるのは当然ともいえる。
「フランス革命」には、火山活動による天候不順が大きな要因になった、という説がある。
⇒2012年3月 9日 (金):餓死という壮絶な孤独(3)/花づな列島復興のためのメモ(34)
⇒2009年10月16日 (金):八ツ場ダムの深層(6)吾妻川の地政学
⇒2012年9月30日 (日):「火山の冬」と富士山噴火の可能性/花づな列島復興のためのメモ(147)
今日の東京新聞の朝刊コラム「筆洗」に面白い説が紹介されていた。
識字率と革命の関係である。
フランス革命はパリ周辺の男性の5割が文字を書けるようになった時に、起きたのだという。
識字率 (Literacy rate) とは初等教育を終えた年齢、一般には15歳以上の人口に対して、文字(書記言語)を読み書きし、理解できる比率として定義される。
識字率を計算する場合、母語における日常生活の読み書きができることを識字の定義とする。
▼人口統計学を駆使して、一九七〇年代にソ連の崩壊を予測したことで知られるE・トッド氏は『アラブ革命はなぜ起きたか』(藤原書店)で指摘している。十七世紀の英国の市民革命も、二十世紀初頭のロシア革命も、男性の識字率が五割を超えたころに起きた。知への目覚めが、民衆の政治参加を呼び起こす条件になるのだ▼トッド氏が識字率とともに重視するのが、出生率と内婚率だ。女性の識字率が上がると、妊娠出産を自分でコントロールするようになり、出生率は下がる傾向がある。女性の意識が、根本的に変化したということだ▼もう一つの内婚とは、いとこ同士など身内で結婚し合い、一族の絆を固めること。この率が下がることは、人々がより開かれた人間関係を求めるようになったことを示すという▼これらの指標を分析すれば、「エジプトの社会は、呆気(あっけ)にとられるような仕方で変貌しつつある」のは明らかだと、トッド氏は指摘する。「政治体制の過渡的形態がどんなものになるにせよ、社会はより個人主義的にして自由主義的になるだろう」と▼エジプトで起きている変革への流れは、大河に銃を撃つような愚行では決して止められない。それだけは確かだろう。
E.トッドのついてのWikipediaの説明は以下のようである。
エマニュエル・トッド (Emmanuel Todd, 1951年5月16日 - ) は、フランスの人口学・歴史学・家族人類学者である。人口統計による定量化と家族構造に基づく斬新な分析で知られる。現在、フランス国立人口学研究所 (INED) に所属する。2002年の『帝国以後』は世界的なベストセラーとなった。
日本の核武装に対する考えは現在の私とは異なるが、一理ある。
2006年、朝日新聞のインタビューにおいて、「核兵器は偏在こそが怖い。広島、長崎の悲劇は米国だけが核を持っていたからで、米ソ冷戦期には使われなかった。インドとパキスタンは双方が核を持った時に和平のテーブルについた。中東が不安定なのはイスラエルだけに核があるからで、東アジアも中国だけでは安定しない。日本も持てばいい。」と述べ、日本の核武装を提言した。さらにトッドは、ドゴール主義的な考えだとして、「核を持てば軍事同盟から解放され、戦争に巻き込まれる恐れはなくなる」と指摘する。ほか、被爆国である日本が持つ核への国民感情については、「国民感情はわかるが、世界の現実も直視すべき」とした。
フランスの核武装については、何度も侵略されてきたことが最大の理由とし、「地政学的に危うい立場を一気に解決するのが核だった」と指摘した。
日本が核兵器を持った場合に派生する中国とアメリカと日本との三者関係については、「日本が紛争に巻き込まれないため、また米国の攻撃性から逃れるために核を持つのなら、中国の対応はいささか異なってくる」との見通しを出したうえで、「核攻撃を受けた国が核を保有すれば、核についての本格論議が始まり、大きな転機となる」と指摘した。
識字率に戻れば、識字率というのは認識力と表現力のことであろう。
とすれば、過半の認識力・表現力が深まったとき、革命が起きるというのは納得的である。
なお、世界の識字率の現状は下図のようだとされる。
Wikipedia-識字
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