福島第一原発事故の“収束”は何時になるのか?/原発事故の真相(78)
2011年12月16日、野田首相(当時)は、「福島原発事故が冷温停止状態に達し、事故そのものは収束した」と宣言した。
「冷温停止状態に達し」「事故そのものは」という欺瞞に満ちたレトリックで、野田氏は何を主張し、何を隠蔽したかったのだろうか?
どう贔屓目に見ても、この時点で、「福島原発事故が収束した」とは言えないことは、その後の事態によってはっきりしている。
それは決して後知恵ということではなく、客観的にみれば当初から明らかであった。
⇒2011年12月17日 (土):フクシマは「収束」したのか?/原発事故の真相(14)
汚染水の海への流出問題の深刻性については言うまでもない。
⇒2013年7月28日 (日):高濃度汚染水対策を急げ/原発事故の真相(74)
⇒2013年7月31日 (水):東京電力のPRの姿勢/原発事故の真相(75)
⇒2013年8月 7日 (水):福島第一原発の汚染水の水収支/原発事故の真相(76)
⇒2013年8月17日 (土):汚染水対策の不安/原発事故の真相(77)
海の汚染は、言うまでもなくわが国だけの問題に留まらない。
海への流出以外にも、新たに汚染水の貯蔵タンクから漏出が判明した。
東京電力は19日、福島第1原子力発電所の原子炉の冷却に使った後の汚染水を貯蔵するタンク周辺で水たまりが見つかり、真上約50センチで最大毎時100ミリシーベルトと非常に高い空間線量を計測したと明らかにした。東電は「タンク内の汚染水が漏れた可能性が高い」としており、少なくとも120リットルが漏れたとみられる。
原子力規制委員会は、国際的な事故評価尺度のレベル1と暫定評価した。8段階のうち下から2番目の「逸脱」に当たる。
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO58693210Q3A820C1CR8000/
国際事故評価レベルに該当する事態である。
国が定めた一般人の年間限界被曝量は1mSv/1年間である。
1年間は、約365×24時間=8,760時間であるから、100mSv/時だとすると、約88万倍である。
あるいはわずか3,600秒/100=36秒で限界被曝量に達する。
また、原発の作業員が年間に許容される放射線量は、特に50mSvとされているが、わずか30分で達する。
東電は海への流出はないとしているが、原子力規制庁は19日、汚染水が付近の排水溝から海に流出した可能性を調査するよう指示した。
どうして「海への流出はない」と言えるのか?
一般論としても、「ない」ことを証明することは困難である。
まして今までの広報の姿勢からして、字面通りに受け取る人はほとんどいないだろう。
第一、漏れている場所も特定できていないという。
現場の線量が高いため、近寄れないからだ。
東電に事故収束能力がないことははっきりしている。
政府が明確に主導権を発揮するべきだろう。
再稼働の是非論は、福島第一の事故が、真に収束してからの話ではないか。
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