三段階論という方法③庄司和晃の認識の発展過程論/知的生産の方法(73)
小学校教師の経験を持つ教育学者庄司和晃は、教育を認識の発展過程として捉え、認識発展のメカニズムについて、独自の三段階の論理を構築した。
庄司の考察を、『認識の三段階連関理論』季節社; 増補版 (1999年4月)によって見てみよう。
認識に関して、抽象度という「ものさし」を導入してみる。
この世界は、具象的なもの(素朴的段階)、抽象的なもの(本格的段階)、半抽象的なもの(過渡的段階)の3段階に区分けすることができる。
三:概念的・抽象的・普遍的・法則的・理論的
二:表象的・半抽象的・特殊的・コトワザ的
一:感覚的・具象的・個別的・経験的・体感的
この認識の3段階の構造の理解において、核心となるものは、二の「過渡的段階」である。
二は、三の「本格的段階」と一の「素朴的段階」の要素をあわせもった中間的な性格を帯びており、「三+一」という二重性としてとらえることもできる。
二の発見は、「三+一」の構造を探しだすことであり、問題・事象の分析において有効性を発揮する度合いも高い。
認識の発展とは、今まで知らなかったことを知るようになったり、これまで感覚的にしかとらえていなかったものを理論的にとらえるようになったりすることである。
部分的にしか把握していなかったものが、より全体的な把握に到達することである。
こうした認識の発展には3つのあり方がある。
イ 「のぼる」道
認識が一般的・抽象的・全体的になり、適用できる範囲が拡大し、視野がひろがる。
つまりより展望がきく地点に立つ道。
法則化・原理化・本格化・抽象化の過程。
ロ 「おりる」道
認識が具象化していく認識発展のプロセス。
目に見えない一般的なものが感覚的なものへ近づき、目で見え、手でつかめるような地点へくる道。
「のぼり」の逆に、素朴化・具象化(具体化)・図解化・例証化・感覚化の過程。
ハ 「よこばい」の道
段階間の「のぼりおり」ではなく、同じ段階を「よこばい」して、その認識内容を拡張していく認識発展のありかた。
論理的な思考の説明として、次図のような三角形が示される。
2011年2月 9日 (水):ファシリテーターと理路の見える化/知的生産の方法(10)
上図を、「のぼる」「おりる」「よこばい」として見ることもできよう。
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