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2013年8月17日 (土)

汚染水対策の不安/原発事故の真相(77)

福島第一原発事故による汚染水が深刻化している。
⇒ 2013年7月28日 (日):高濃度汚染水対策を急げ/原発事故の真相(74)
⇒2013年8月 7日 (水):福島第一原発の汚染水の水収支/原発事故の真相(76)

政府も本腰を入れることにしたようだが、流出量の認識自体が混乱しているようだ。

 東電の試算は、独自のコンピューターソフトに、原発と水源となる山との高低差や、地盤の通しやすさなどを入力。その結果、地下水は一日十センチずつ山側から海側へ動き、一千トンの地下水が敷地全体に流れ込んでいるとはじいた。このうち、四百トンはこれまでの汚染水処理の経験から、1~4号機の建屋地下に流れ込んでいることが判明。残り六百トンのうち、二百トンは5、6号機へ向かい、四百トンは高濃度汚染水がたまる問題のトレンチ(配管やケーブルを収める地下トンネル)周辺の敷地を経て、海に流れ込んでいると推定した。
 それなりに根拠がありそうだが、東電は流出しているとする四百トンのうち「高濃度に汚染されているのは百トンだけだ」と強調する。
 一方、「試算」と呼べるかどうかも怪しいのが政府の数字。
 東電は、護岸近くに井戸を三本掘り、それぞれで地下水を一日百トンくみ上げ、海への漏出を止める計画。
 政府の試算は、このくみ上げ量を「くみ上げなかったら、海に漏れるはずの汚染水」とみなし、単純に井戸の数をかけて三百トンとはじいている。
 東電側では、政府の数字にとまどいを隠せず、担当者は「井戸から一日計三百トンくみ上げるという計画であって、それ以上の意味はないのに…」と話す。井戸も二本は未完成で、本当に一日百トンの地下水がたまるかどうかも分からない。
 東電の試算値と百トンの開きがあることについて、あらためて経済産業省資源エネルギー庁に問い合わせた。担当者は「百トンは別のエリアに行っている」と答えたが、具体的には明示できなかった。
Photo
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013080902000119.html

資源エネルギー庁の発表数値は、以下のような内容である。
・1000トン/日の地下水が福島第一に流れ込んでいる。
・このうち、原子炉建屋に流れ込んでいる約400トンがタンクに溜められている。
・残りの約600トンのうち、半分の300トンが汚染水として海に流出し、300トンは汚染されずに海に流出している。

1000トン/日の地下水流入と300トンの汚染水流出は、今回初めて公表されたものである。
問題は、原子炉建屋には、地下水の流入だけで、流出はないのか、ということである。

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http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20130808/1375932208

上図におけるβをゼロと見なせるかということであるが、不自然な仮定と考えるのが妥当であろう。
つまり、高濃度汚染水の流出量は不定であり、何時からかということも良く分かっていないというのが実態である。

先ずは流出を止めることが先決ではあるが、地下水の流動の様子が手さぐりであるというのが現状であることを直視しなければならない。
東電の不誠実な態度が原因であり、対策が遅れるわけである。

その他にも、福島第一原発の地盤は、地震で沈下している。

 汚染水の水位を、地下水位より少し下に維持していれば、地下水が建屋に入り込もうとする力の方が少しだけ勝り、地下水の流入は抑えつつ、汚染水は建屋外に出ない-との方法で管理ができる。
 沈下した深さが正確に分からず、建屋と地下水の関係が実態とずれれば、大量の地下水流入で、汚染水がどんどん増えるという事態を招きかねない。
 このほか、地盤沈下により、建屋とトレンチ、トレンチ同士の継ぎ目などが損傷し、汚染水が漏れ出している恐れもある。
 建屋も海水配管トレンチも、それ自体の耐震性は高いが、ケーブルが入った小さなトレンチとの接合部などについては、東電も「損傷が起きている可能性は否定できない」と認識している。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013081502000154.html

東電の地盤高の調査は、人工衛星による測定であるが、精度が汚染水対策としては不十分だという。
さまざまな仮定の下に立てられた対策であり、その仮定の検証を急ぐべきであろう。

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