iPS細胞から脳を作製/闘病記・中間報告(60)
脳卒中の後遺症はやっかいだ。
私も発症後、12月が来れば満4年ということになるが、いまだに右半身はいうことを素直に聞いてくれない。
歩行のような普通の動作が難しいのだ。
それでも、下肢は歩行ができるようになった。
問題は上肢である。
右手は当初の「廃用」という診断からは脱したのではないかと思うが、「実用」には程遠い、といったレベルである。
⇒2011年10月25日 (火):簡易上肢機能検査/闘病記・中間報告(35)
しかし、極めて緩慢ではあるが少しずつは回復しているので、可能な限りリハビリに努めたいと思う。
医学の進歩は驚異的である。
オーストリアや英国の研究チームが、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から、直径約4ミリの立体的な脳組織を作ることに成功したという発表があった。
脳組織には大脳皮質に似た構造や髄膜などが含まれており、複雑な人間の脳の一部を形作った画期的な成果。脳の成長が滞る小頭症の患者のiPS細胞からも脳組織を作り、発達異常が起きることを確認した。
チームは「脳が出来上がる仕組みを調べたり、人間の脳に特有な病気の仕組みを解明したりすることにつながる」としている。
チームは実験用の人間のiPS細胞を神経系の細胞へ変化させ、培養液をかき混ぜるなどしながら培養した。すると変化を始めて2カ月で直径約4ミリの脳組織に成長した。ただ各部分の位置や形は本来の脳とは異なり、大きさは10カ月間培養を続けてもこれより大きくならなかった。中央部では、酸素や栄養が行き渡らず細胞が死んでいた。
http://sankei.jp.msn.com/science/news/130829/scn13082917000003-n1.htm
もちろん、血管がないなど、脳を完全に再現したわけではないらしいが、重要な大きな一歩といえよう。
出来た脳の組織は、ヒトの大脳皮質のように神経細胞の層が重なり、記憶をつかさどる海馬の細胞や目の網膜の組織も含まれていました。また、研究グループでは、脳が生まれつき小さい「小頭症」の患者からiPS細胞を作り出し、同じように脳の組織にしたところ病気の状態を再現することもできたとしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130829/k10014117031000.html
今の時点では、神秘的ともいうべき脳の働きには程遠いというべきであろうが、進歩の速度は驚異的である。
神の領域に近づいてきたといえよう。
そこで問題になるのは、倫理である。
医学の分野でも研究者の不正の報道が相次いでいる。
⇒2013年8月 1日 (木):研究における成果主義の弊害/知的生産の方法(70)
とりわけ脳は、意識や感情という人間を人間たらしめている要因の司令塔である。
かつてはSFとして扱われていたテーマが現実化しているともいえる。
山中伸弥教授らのiPS細胞の研究は、日本人として誇るべき業績であるが、今後倫理の問題でもわが国はリーダーシップを発揮していけるであろうか?
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