違いがわかる男とは/知的生産の方法(68)
インスタント・コーヒーのCMで、「違いの分かる男のゴールド・ブレンド」というものがある。
従来のインスタント・コーヒーとは一線を画したもの、すなわち差別化している、ということを訴求したものである。
調べてみると、1970年の松山善三さん(映画監督)から始まり、次の1971年は黛敏郎さん(作曲家)等の著名人が起用された。
いかにも「違いが分かりそうな」人たちのラインナップだった。
⇒2009年8月 8日 (土):「同じ」と「違い」の分かる男
最近は、私のTV視聴時間の関係から余り記憶に残っていない。
2010年が 大沢たかおさん(俳優)、2012年が吉田美和・中村正人さん(DREAMS COME TRUE)である。
http://media.yucasee.jp/r/detail/18943
しかし、本当に違いが分かるならば、インスタントで良しとするものなのかどうか。
昔からの疑問であるが、それは置いておこう。
そもそも「違いがわかる」とはどういうことだろうか?
われわれは、サルの顔はみな同じように見える。
すなわち無差別である。
しかし、京都大学の研究者たちはサルの顔(人相ならぬ猿相)を識別することにより、社会構造などを研究した。
⇒2013年6月18日 (火):AKB48と個体識別/知的生産の方法(61)
「分かる」という言葉は、「分かつ」が語源であるといわれる。
辞書(デジタル大辞泉)で「分かつ」を見ると、以下のような解説が載っている。
[動タ五(四)]
1 一つのものを離して二つ以上にする。別々にする。分ける。「軍勢を二手に―・つ」
2 (「頒つ」とも書く)それぞれに分けて配る。分配する。「希望者には実費で―・つ」
3 見分けて決める。判断する。「理非を―・つ」「黒白を―・つ」
4 仕切る。区別する。「昼夜を―・たぬ突貫工事」
5 同じ感情をお互いに持ち合う。「悲しみを―・つ」
6 (「袂(たもと)をわかつ」の形で)人と別れる。また、同じ行動をしてきた仲間と縁を切る。「僚友と袂を―・つ」
「分かつ」ことの出発点は、特徴を捉えることである。
すなわち、「違い」が「分かる」ことである。
そして、その「違い」を記憶しやすくするために、特徴を捉えてネーミングする。
高崎山のジュピターは、それに相応しい風格を持っていたのであろう。
しかし、「同じ」と「違う」は相対的ともいえる。
自民党と公明党は、明らかに違う政党である。
理念も個別の政策の中身においても、「違う」ところは多々ある。
しかし、連立を組んで政権を担っている限り、与党という括りでは「同じ」政党ということになる。
小異を捨てて大同につくということであろうが、行き過ぎると、何のための政党か、ということになり兼ねない。
しかし、政党(より広くは政治結社あるいは団体)は、近いものほど同じ層を奪い合うので、手を組みにくいということもある。
合従連衡は世の常ということであろうか。
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