治験とクリティカル思考/知的生産の方法(69)
製薬会社ノバルティスファーマが販売する降圧剤ディオバン(一般名・バルサルタン)の臨床研究データに人為的な操作がなされていたらしい。
京都府立医大の松原弘明元教授が実施したもので、府立医大が11日に発表した。
高血圧治療薬は、脳卒中を防ぐ効果が期待されている。
その効果が、実際より高く見せかけられていた可能性が強いということだ。
医療の世界でEBM(Evidence-Based Medicine)という言葉が使われる。
evidenceというのはすでに日本語化しているが、証拠・根拠・証明といった意味である。
つまり、EBMというのは、根拠に基づいて医療を行うということである。
裁判が法と証拠に基づいて行われなければならないといわれるように、医療も、科学的根拠に基づいて行いましょう、ということである。
当たり前のことではあるが、最近の医者は、検査データがなければ診断できないのかと思うくらい、検査を重視する。
患者の側からすると、検査疲れをしてしまうという感じである。
Evidence-Basedというのは、言い換えれば、クリティカル(ロジカル)思考のことである。
クリティカル思考の骨格は、次のような三角形の構造で説明される。
http://www.bzcom.jp/category_1/item_93_2.html
いわゆるロジカル思考の三角形の構造である。
その根本であるデータが操作されていたとは!
問題の臨床研究は、高血圧の日本人約3千人が対象。ディオバンを飲むと、ほかの高血圧治療薬だけを飲んだ場合に比べて脳卒中や狭心症を防ぐ効果が高いとする論文が2009年、欧州心臓病学会誌に発表された。だが外部からデータに疑義があることを指摘され、同大が今年3月に調査を始めた。
発表によると、調査委員会が患者のうち223人分のカルテを調査したところ、34人で脳卒中などが起きていないのに発症したとしたり、逆に発症したのに、起きていなかったとしたりする不正操作があった。血圧の数値の追加や修正も223件あった。カルテなどから改めて解析し直すと、ディオバンとほかの薬との間で、効果の差は見られなくなったという。
http://www.asahi.com/national/update/0711/OSK201307110086.html
脳卒中患者にとっては、こんなことがあるなんて信じたくはないことである。
今回の研究にはノバルティス社の社員が参加し、大学側に寄付金を出している。
松原元教授はすでに2月に退職しているが、大学側の調査に「操作はしていない」との趣旨の発言をしている。
真相はどうか?
産学協同のあり方が問われているといえよう。
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