またエチオピア航空のボーイング787機から出火
ロンドンのヒースロー空港で7月12日(現地時間、以下同)、駐機中のエチオピア航空(ETH)のボーイング787-8型機が出火した。
ボーイング787機は、ボーイング社が開発・製造する中型ジェット旅客機で、中型機としては航続距離が長く、今までは大型機でないと飛行できなかった距離もボーイング787シリーズを使うことにより直行が可能になった。
これにより、大型機では採算ベースに乗りにくい長距離航空路線の開設も可能となったとされる。
同機は、炭素繊維を使用した炭素繊維強化プラスチック(カーボン)等の複合材料の使用比率が約50%であり、残り半分が複合材料に適さないエンジン等なので、実質機体は完全に複合材料化されている。
787-8型機は、座席数223座席(3クラス制)であり航続距離8,500海里(15,700km)の787型機の基本型であり、最初に開発されたモデルであり、B787として実際に製造されている唯一のモデルである。
期待が大きい機種であるが、試験飛行中からトラブル続きで、初飛行は1年以上遅れ、結果として全日本空輸に初号機が引き渡されたのは3年以上遅れの2011年9月だった。
2011年10月26日、全日本空輸が成田-香港間で、B787型として世界初の商業運航を行った。
就航当初日より機材トラブルによる遅延や運休が度々見られていた。
今年に入って、ブレーキの不具合、バッテリーからの出火、燃料漏れ、潤滑油漏れなどのトラブルが相次いだ。
バッテリーからの出火事故では、連邦航空局(FAA)が耐空性改善命令を発行し、1979年のマクドネル・ダグラスDC-10以来の、運航中の同型機すべてが世界中で運航停止になるという事態となった。
今回の事故について、英国航空事故調査局(AAIB)は18日、航空機用救命無線機(ELT)が出火原因となった可能性が高いとの報告書を公表している。
ELTは航空機が墜落や遭難時に遭難信号を発報するもので、当該機のELTはハネウェル・インターナショナル製である。
機体後部の上側で広範囲に激しい熱損傷が見られており、この付近にはELT以外に火元となる可能性のあるシステムはないという。
なぜ、最新鋭機でトラブルが続くのか?
私は、同機が相次いだことに関連して、複雑系に対してはまだまだ科学的・技術的知見が十分に蓄積されていないのではないか、としたことがある。
⇒2013年1月18日 (金):ボーイング787機の不具合と「キレ」の思考の限界/知的生産の方法(29)
「キレ」の思考とは、村山昇氏が、『「キレ」の思考 「コク」の思考』東洋経済新報社(1211)で鮮やかに提示された思考の型である。
「キレ」と「コク」はビールのCMで有名になった対語であるが、思考領域について、この言葉を適用した村山氏の慧眼は見事であると思う。
⇒2013年1月17日 (木):「キレ」の思考と「コク」の思考/知的生産の方法(28)
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