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2013年7月18日 (木)

監視国家の時代?/花づな列島復興のためのメモ(246)

エドワード・ジョセフ・スノーデンという1人のアメリカ人が世界の注目を集めている。
6月に香港で取材やインタビューを受け、アメリカ国家安全保障局(NSA)による個人情報収集の手口を告発した。
6月22日、米司法当局により逮捕命令が出され、エクアドルなど第三国への亡命を検討しているとされるが、詳細は不明である。

スノーデン氏は、元米中央情報局(CIA)職員で、米国家安全保障局(NSA)で契約職員として働いていた。
NSAと米連邦捜査局(FBI)が、「プリズム(PRISM)」と呼ばれるプログラムを通じて、大手インターネット関連企業9社のサーバーから直接利用者のデータを収集しているとされている。
グーグル、マイクロソフト、アップル、ヤフーなどである。

このニュースに接して、G.オーウェルの『1984年』を想起した人は多いだろう。
オーウェルは、高校英語の副読本などに使われ、幅広い読者を持つ『Animal Farm(動物農場)』で知られる。
第2次世界大戦が終了して間もない1948年に発表された『1984年』と題する未来小説を発表した。
『1984年』は、ディストピア小説であるといわれる。
7月14日の日本経済新聞の文化欄に、鴻巣友季子という人が、「それぞれの1984年」という文章を寄せているが、鴻巣さんによれば、「ディストピアとは荒廃した反ユートピアではなく、むしろ理想郷の管理がゆきすぎた状態を指し」ということである。

1948年は、連合国側に立った旧ソ連が大戦の勝利で発言権を増し、社会主義国が世界地図の上に一定の勢力圏として示されるようになった時点である。
当時、社会主義国は、理想郷(の近似解)という見方が一定の影響力を持っていたことを考えれば、近未来のディストピアを描こうとしたオーウェルの意図もよく分かる。

 
『1984年』は改めて紹介するまでもないであろうが、以下のようなあらすじの一種の寓意小説である。
1984年、オセアニア国のロンドンという都会は「ビッグブラザー」に支配されていた。
「ビッグブラザー」は、誰も見たことがないが支配階級の顔として、国民の愛と恐怖の中心として存在する。
主人公W.スミスは真理省に勤務し、新聞のバックナンバーを改訂することを仕事としている。
すなわち、過去の出来事さえも国家に管理されているのである。

1984年時点で世界は3つの超大国に分かれて戦争をしている。
戒厳令は恒久化し、警察が絶対的な権力を握り、テレビの受像機には視聴者を監視するモニター装置がついている。
個人的な愛やセックスは非愛国的な行為であり、恋をすることは国家に対する反逆者となることである。
にもかかわらず、スミスは恋に陥る。
電子苦痛装置にかけられ、人間の心の奥に存在する恐怖心を利用した拷問に耐えられず、スミスは「ビッグブラザー」を敬愛する人間に変えられてしまう。

私は、1985年が戦後史の転換点であったように思う。
それは、以下のような出来事を根拠としている。
1.ゴルバチョフの旧ソ連書記長就任により、「東の世界」の崩壊の起点となった
2.プラザ合意が成立し、ドル安円高へトレンドが変わった
3.わが国の1人当たりGNPが1万ドルを超え、高度消費社会に入った

それに加え、当時は、現実の1985年は『1984年』と異なったものとなっていたことを挙げたが、今考えるとそれは早計だったようだ。
北朝鮮は、絵に描いたような独裁管理社会のようである。
それに加え、アメリカ合衆国が、国民の隅々まで監視できる体制になっていたとは!

国家というものは、畢竟個人の自由とは対立するものなのであろう。
それが、吉本隆明のいう共同幻想と自己幻想の逆立というテーゼとどう関連しているかはよく分からないが。

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