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2013年6月20日 (木)

原発の出口戦略をどう考えるのか/花づな列島復興のためのメモ(233)

問題になった高市早苗自民党政調会長の発言の要旨は次のようであった。

日本に立地したい企業が増えているが、電力の安定供給が不安要因だ。原発は廃炉まで考えると莫大(ばくだい)なお金がかかるが、稼働中のコストは比較的安い。東日本大震災で悲惨な爆発事故を起こした福島原発も含めて死亡者が出ている状況にない。そうすると、最大限の安全性を確保しながら(原発を)活用するしかないのが現状だ。火力発電も老朽化し、コストがかかる。安いエネルギーを安定的に供給できる絵を描けない限り、原発を利用しないというのは無責任な気がする。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013061902000104.html

「福島原発も含めて死亡者が出ている状況にない」という部分が批判を受けて、撤回するに至ったが、「原発は廃炉まで考えると莫大なお金がかかるが、稼働中のコストは比較的安い」という部分はどうであろうか?
廃炉まで考えないでコスト計算をして、「比較的安い」と言ってみても意味がない。
高市氏は、ライフサイクルコストという概念を知らないのであろうか?
Wikipedia-ライフルコストを見てみよう。

ライフサイクルコスト(Life cycle cost)とは、製品や構造物などの費用を、調達・製造~使用~廃棄の段階をトータルして考えたもの。訳語として生涯費用ともよばれ、英語の頭文字からLCCと略す。
製品や構造物などの企画、設計に始まり、竣工、運用を経て、修繕、耐用年数の経過により解体処分するまでを建物の生涯と定義して、その全期間に要する費用を意味する。建物以外には土木構造物(橋梁、舗装、トンネル)等にも適用されている。
費用対効果を推し量るうえでも重要な基礎となり.初期建設費であるイニシャルコストと、エネルギー費、保全費、改修、更新費などのランニングコストにより構成される。
ライフサイクルコストの低減を図るには、企画・計画段階から全費用を総合的に検討することが必要といわれる。

廃炉までのことはあえて考えないというのだろうか?
こういうスタンスを、出口戦略がない、ということだろう。
日中戦争、太平洋戦争の最大の教訓は、出口戦略の不在だともいう。

戦争に限らず、何か(経営計画も然り)を計画するということは、最初から最後の姿がどうなるかを想定の上、どういう可能性があるのか、熟慮した上で行うべし。
戦争なら、戦争を始める前に、どういうときに戦争を終結するか、(どういう状況になったら、戦争をやめるか等も含む)、いわゆる出口戦略を考えた上で行動すべきである。

http://kaikoku-japan.net/column/4909

出口戦略とは、ビジネス用語としては、市場から撤退する際などに使われる。
⇒2011年8月24日 (水):綱領なくして漂流する民主党の出口戦略を問う

原子力規制委員会が、19日に新規制基準を決定し、7月8日から施行されることになった。

新基準の施行日は7月8日とし、閣議で正式に決定する。新基準施行後は国内の6原発12基で安全審査への申請が出される見通しだ。
規制委の田中俊一委員長は同会合で、新基準について「現時点でみれば、国際的にみてもきちっとした体系はできているが、真価が問われるのはこれからの審査の中で魂が入るかどうかだ」と発言した。
停止中の原発が再稼働するためには新基準が要求する性能を満たしていることが求められる。福島事故の直接的な原因となった津波への対策では、各原発ごとに過去最大を上回る「基準津波」を設定し、防潮堤などの防護対策を要求するほか、原子炉建屋など重要施設の設置は、耐震設計上考慮すべき活断層がない場所とする。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE95I03B20130619 

現在運転中の原子炉はどうなるか?
関西電力大飯原発3、4号機(福井県)が唯一である。
原子力規制委員会は、新制基準にほぼ適合し、安全上重大な問題はないとの報告書案をまとめたらしい。

報告書案は20日の会合で公表される予定。今月中にも規制委に提出され、了承される見遠し。定期検査に入る9月まで、運転が継続することになる。
http://mainichi.jp/select/news/20130620k0000m040142000c.html

また、規制委は大飯3、3号機の間を通る断層(破砕帯)を調査しているが、活断層かどうかの判断は、規制基準の施行後にする方針だという。
田中委員長の言うように、「真価が問われるのはこれからの審査の中で魂が入るかどうかだ」であろうが、その言葉と、活断層かどうかの結論を棚上げしたまま、運転継続の可否を判断することとは、矛盾するのではないだろうか。

しかし、当然、新規制基準の施行により運転が難しくなる原発が出てくるであろう。
そうなれば、廃炉ということが課題になってくる。
廃炉への見通し(費用、工程・・・)はあるのだろうか?
再稼働の前にしっかりした出口戦略を考えるべきではないのか?

 

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