アベノミクスの危うさ(4)/花づな列島復興のためのメモ(225)
今日の東京新聞の「日曜訪問」欄は、平川克美さんのインタビュー記事である。
「アベノミクス幻想に警鐘」と、大日向公男記者がまとめている。
平川さんは、(株)リナックスカフェの代表取締役としてビジネスの現場に身を置きつつ、文明批評的な著書を書いている。
平川さんの見方の基盤は、経済成長の時代は終わり、均衡的な経済状況に入っているという時代認識である。
東日本大震災の発生する少し前に刊行された『移行期的混乱―経済成長神話の終わり』筑摩書房(2010年9月)は、著者自身が「まえがき」で、「どう見積もってもビジネス書という範疇にには入らないだろう」「結果的には戦後精神史論」になったと書いている。
それは、文筆家としてのデビュー作『反戦略的ビジネスのすすめ)』洋泉社 (2004年11月)以来、一貫している。
Amazonの内容紹介を引用しよう。
当今、ビジネスの世界では、グローバリズム・スタンダードを意識した、短期的な将来に目的を設定する「戦略論」「ゴール思考」といった思考法が流行している。この思考法では、ビジネスは敵を出し抜き、勝ち負けを決める戦争であると考えられているが、しかし、本当にそうだろうか? 本書では、攻略しないという方法にこそ成長のヒントがあることを、「仕事とは何か」「会社とは何か」「人はなぜ働くのか」「なぜ人はお金を欲望するのか」「モチベーションはどこから来るのか」などの本質的な考察を通してビジネスというものを再定義することによって証明し、反戦略的なビジネスのあり方といったものを提案する。 また、畏友・内田樹(神戸女学院大学教授)とのビジネスをめぐる特別対談も収録。
経営戦略をはじめとして、ビジネスの世界では好んで戦争とのアナロジーが使われる。
言葉の使い方は思考そのものであるから、ビジネスをそういうものとして考えるという風潮が一般的ということである。
しかしビジネスとはそういうものか?
勝ち負けをはっきりしなければならないものなののか?
それは庶民とは直接関係がないうわべだけの経済成長である。
格差はそのままで、市場に金をばらまき、小金持ちにバブルの幻想を持たせる。
証券や株など金で金を買うアメリカ式の金融ビジネスで、貯蓄した金を蕩尽させるものである。
佐伯啓思氏の用語によれば「砂漠の経済学」である。
その対案として平川さんが提起するのは、ヒューマンスケールの経済や生き方である。
重要なのは、経済合理主義やマネジメントではなく、騎手が馬の調子と相談しながら走るような「折り合いのメソッド」である。
「3・11」は、経済システムや都市集中システムを見直す大きな契機となった。
しかし、金銭一元的な価値観を、十分に改められたとは言えないのではないか。
私には、「瑞穂の国の資本主義」の具体的あり方はまだ明確ではない。
しかし、平川さんの提起している方向性が、1つのあり方を示唆していることは間違いないように思う。
それはアベノミクスとは重ならないように見えるのだが。
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