整理のカギは「3」にある?/知的生産の方法(60)
私は身の回り、机の周りなどの整理が下手である。
現在は、片麻痺だから、と言い訳しているが、発症前からのことである。
実際、片麻痺だとちょっと重い本は重労働になるし、書類のファイリングなども厄介であることは事実である。しかし、整理ベタなのは、たとえば学生時代の下宿の様子などをみれば一目瞭然といったところである。
この性格は、遺伝的なものなのだろうか、それとも後天的なものだろうか。
「断捨離」というような本も参考にはしてみたが、なかなかうまく行かない。
そもそも「整理」とはどういうことだろうか?
調べてみると、以下のような説明が載っている。
1 乱れた状態にあるものを整えて、きちんとすること。「資料を―する」「気持ちの―がつく」「交通―」
2 無駄なもの、不要なものを処分すること。「人員を―する」
3 株式会社が支払不能・債務超過に陥るおそれまたはその疑いがあるとき、再建を目的として裁判所の監督の下に行われる手続き。商法に規定があったが、平成18年(2006)5月、会社法の施行に伴い、この制度は廃止された。
4 新聞編集において、原稿や写真などを取捨選択し、見出しを付け、紙面を構成すること。またその業務を行う部署。「編集局―部」
[用法]整理・整頓――「部屋の中を整理(整頓)しなさい」「書棚をきちんと整理(整頓)する」など、整えるの意では相通じて用いられる。◇「整理」は、「交通整理」「感情の整理がつく」のように、混乱しているものをきちんとした状態にする意。また、無駄なもの、余分なものを除く意もある。「人員整理」「蔵書を整理する」など。◇「整頓」は乱れているものの位置を元にもどし、整えること。「教室の机を整頓する」「乱れた資料の順序を整頓する」
デジタル大辞泉
よく、工場や工事現場などで、下図のような看板を見る。
整理と整頓はほとんど同義語のようにも思えるが、整頓は物理的に整理する、というようなニュアンスであろうか。
私の場合は、整理も整頓も悪いが、より強くは整頓が悪いのだろう。
私の知人に、私以上に机の上が乱雑な人がいる。
彼自身は、これで必要な資料はどこにあるか全部把握しているから、別に問題がないと言っている。
事実、不思議な能力を持っていて、彼が探し物をするところを見たことがない。
しかし、たとえばISOの認証などは、絶対に得られないであろう。
私は、「整理」ということを考えると、「3」という数字がカギになるように思う。
というのは、モノゴトの成り立ちについて、3分割することが基本にされてきたからである。
例えば、音楽のソナタ形式は、提示部・展開部・終結部の3つに分かれている。
ヘーゲルの弁証法は、正・反・合という3つのステップを踏む。
「3」という数字は、単純なものの終わりであり、かつ複雑なものの始まりである。
つまり、2分割では不十分な感じがし、4分割以上だと整理が足りないように感ずる。
人間が抵抗なく受容できる事柄の数は3つが限度だともいう。
4つになると急に複雑さが増すように、心理的に感じられるということである。
これは、要素間の関係を考慮すると、納得的である。
http://www.issj.net/mm/mm0301/mm0301-8.html
力学系でも、厳密な計算が可能なのはせいぜい2体問題までであって、3体問題になると、いかに近似の精度を高めるかということが重要な問題になるという。
ちなみに3体問題以上を多体問題という。
「3」は複雑な系の始まりなのである。
一方、複雑なものを「3」に集約することも日常的な言語の中でよく行われていることである。
「天・地・人」「過去・現在・未来」「上・中・下」「遠・中・近」「前・中・後」「初級・中級・上級」「心・技・体」「守・破・離」……。
ものごとを構造的,過程的に捉えようとすると、「3」は最も基礎的な数値ということができる。
プレンゼンテーションにおいては、3つに分けて説明することが説得力を持つと言われている。
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