非常時における状況認識の重要性と電源喪失の教訓/原発事故の真相(72)
「孫子の兵法」の中の有名な言葉に、「彼を知りて己を知れば百戦して殆うからず」がある。
戦いにおける「情報」の重要性を指摘した例として引用されることが多い。
しかし、「彼を知り己を知る」ことは、まさにマーケティング活動そのものであろう。
よく使われるフレームとして、SWOT分析とか3C分析があるが、これらは「彼を知り己を知る」ことといえよう。
http://www.s-naga.jp/k-page/10swot.html
ところが、東電という会社は、マーケティングが必要ないせいか、どうも「情報」活動がお粗末なようである。
広告宣伝費には巨費を投じ、マス媒体を事実上買収して、原発の安全神話を作り上げてきた。
その辺りのからくりは、本間龍『電通と原発報道――巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ』亜紀書房(2012年6月)に載っている。
ちなみに、本間氏は元博報堂社員であるが、原発に関しては、電博に違いはないようである。
⇒2012年8月23日 (木):将来の原発比率に関する民意/花づな列島復興のためのメモ(134)
福島第一原発では、3月18日に停電事故が発生した。
原因は、ネズミのような動物のためではないかと報道されている。
⇒2013年3月20日 (水):福島第一原発の停電事故/原発事故の真相(60)
真因は確定されたのだろうか?
私は報道に接した記憶がないが、もしそうだとしたら、余りにお粗末な現場の状況が目に浮かび、恐ろしい。
現に1日400トンもの汚染水を発生し続けている現場である。
もし、他の原因ならば?
原因が特定されていないのであれば、的確な対策がとれるのかどうか、別の意味で恐ろしい。
あるいは、別の原因を隠蔽していることはないのか?
まさかとは思うが、何しろ国会事故調という最上級の権威を有する調査団に対して平気でウソをつき、隠蔽するような体質である。
⇒2013年2月 7日 (木):情報の漏洩と事実の隠蔽/原発事故の真相(56)
停電の復旧作業が遅れた一因として、仮設配電盤付近がPHSのエリア外だったことが挙げられている。
停電発生時には3号機などでWebカメラなど一部の遠隔監視システムが動作しなくなり、作業員が現場に行って確認する必要が生じた。
原発内では主要な連絡手段としてPHSを使用しているが、放射線量の高い3号機山側の仮設配電盤付近ではアンテナや基地局の増設が進んでいなかったという。
現場の作業員が重要免震棟の対策本部に連絡するには通信可能な場所まで移動する必要があり、状況把握に手間取ったとのことだ。
福島第一原発の停電、PHSがつながらずに状況把握が遅れる
福島第一原発と第二原発の「3・11」のときの大きな違いは、電源の有無であった。
第一は、電源を喪失して、炉の状況が分からなかった。
第二は、炉の状況把握が可能で、優先順位の判断もできた。
この教訓も生かされていないのだろうか?
停電に備えて、バックアップ用の非常電源を用意できないのだろうか?
それとも、停電事故は「想定外」ということなのか?
マスメディアは、巨額の資金によって、買収に近い状態になっている。
その辺りの事情は、本間龍『電通と原発報道――巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ』亜紀書房(2012年6月)が明らかにしている。
⇒2012年8月23日 (木):将来の原発比率に関する民意/花づな列島復興のためのメモ(134)
東電単独では、事故は「収束」しないのではないか?
⇒2013年4月 9日 (火):東電の当事者能力の欠如/原発事故の真相(66)
マスコミも電博などの大手広告会社の影響力が強いとしたら、信頼できる情報はどこから得られるのであろうか?
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