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2013年6月 9日 (日)

DJポリスのクリエイティブ・コミュニケーション/知的生産の方法(59)

W杯アジア最終予選第7戦・豪州戦は、まさに劇的というに相応しい終わり方だった。
日本は試合終了間際に獲得したPKを、本田(CSKAモスクワ)が真ん中に蹴り込んで1-1の引き分けに持ち込み、3大会連続の予選通過1番乗りで本大会切符をつかんだ。
⇒2013年6月 4日 (火):アベノミクスの危うさ(5)/花づな列島復興のためのメモ(226)

本田選手が真ん中に蹴り込んだのも、翌日の共同インタビューでチームメイトそれぞれの課題を具体的に指摘していたのも、さすがと思わせるものだった。
特に、サッカーのようなチーム競技において、個の自立性を強調していたことは、チームプレーに力点が置かれがちな中で、よくぞいいける、といった感じであった。

試合終了後、例によって渋谷駅周辺に若者中心のファンが集まった。
こういう場合、群集心理というのだろうか、とかく乱暴狼藉が起きがちである。
事実、過去の節目の試合終了後、荒れた時もあった。
今回も懸念されていたが、1人の警察官の見事なアナウンスが群集を鎮めた。
Photo_4
東京新聞6月7日

DJポリスと呼ばれることになったこの警察官は、警視庁機動隊員だという。
われわれの世代にとっては、機動隊は余りいいイメージではない。
私も、学生時代に行ったデモで、頑健な機動隊員に蹴散らされた記憶がある。

しかし、このアナウンスは、ユーモアも織り交ぜて見事なものだったと言えよう。
「サポーターのみなさんは12番目の選手です。ルールとマナーを守って喜びをわかちあいましょう」
「通行妨害してはイエローカードですよ。2枚目が出る前に歩道に上がってください」
「目の前の怖い顔したおまわりさんも、みなさんが憎くてこういうことをやってるわけじゃありません。心の中ではきょうの日本代表のW杯出場を喜んでいるんです」

「機転でコントルール」と見出しにあるが、機転の効いたセリフが、論理だけではなかなか動かない群集をコントロールし得た。
まさにコミュニケーションの神髄である。
Photo_5
http://www.manglobe.com/news/detail_226.html

扁桃体に働きかけたクリエイティブの勝利ではなかろうか。
⇒2013年3月 9日 (土):論理が先か感情が先か?/知的生産の方法(40)
⇒2013年4月20日 (土):脳の3層構造とコミュニケーション/知的生産の方法(49)

よく、「スポーツは筋書きのないドラマだ」といわれる。
先ごろ国民栄誉賞を受賞した長嶋茂雄さんの語録にも「メークドラマ」という言葉がある。
「英語ではそういう言い方はしない」とか、「MAKE DRAMA=負けドラマ」などと言う人もいたが、長嶋さんの伝えたいことは伝わる。
コミュニケーションでは「正しいかどうか」も重要であるが、「伝わるかどうか」がより重要である。
W杯豪州戦は、試合後の展開も含めて、「筋書きのないドラマ」だった。
 

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