部分の和と全体の関係/知的生産の方法(55)
いま、私たちが享受している文明生活は、基本的には、産業革命以降の生産力の向上によるものと言ってよいであろう。
それを導いたのは、科学技術の発展であり、その基礎には、17世紀にニュートン、デカルトらにより確立された近代合理主義がある。
近代合理主義は、機械的世界観と要素還元主義を2つの柱としている。
機械論的世界観とはどのようなものか?
ある原因が結果を生み、その結果がまた原因となってさらなる結果を生み、という風に、世界は原因と結果の連鎖によって動いている、と考える物の見方のこと。 要するに世界は時計のようなものだという考え方。
この立場だと、 原因となるのは作用因だけであり、目的因は排除される。また、「世の中で起こることは全部最初から決まってんのや」という決定論を含意する。この世界観としばしば対置されるのが、生物学的世界観である。
http://plaza.umin.ac.jp/kodama/ethics/wordbook/mechanistic.html
それでは、要素還元主義とはどのように説明されるか?
要素還元主義とはある複雑な事象を理解しようとするとき、その事象をいくつかの単純な要素に分割し、
それぞれの単純な要素を理解することで元の複雑な事象を理解しようという考え方です。
簡単な例を出すと、ある野球チームを調査するときに、あのピッチャーはああいうやつだ。あのファーストはよく打つぞというように、個々の選手を研究することで、ああ、あのチームはきっと打撃の強いチームだな。と考える考え方です。
(必ずしも正確な例ではないですが、日常に即したものをあげてみました。)
現在では複雑な事象をそのまま捉えて全体として理解することが、非常に重要視されています。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1312501953
つまり、世界は因果関係が成り立つ要素の集合体であると見なせ、その要素を統合すれば理解できるという考え方である。
そのように考えれば、世界は設計・制御可能な機械と同じであり、構成要素が多いだけであって、うまく構成要素に分解して考えれば、設計・制御が可能であることになる。
そのように理解する考え方を、機械論パラダイムと呼ぶ。
機械論パラダイムとは、全体は部分の総和であると考えるのである。
機械論パラダイムは、近代科学技術の華々しい“成功”をを導くものであった。
しかし、その“成功”は、機械論パラダイムの限界をももたらした。
要素還元主義の考えるように、全体は単なる構成要素の集合としての性格だけでは考えられないことが多い。
世界には、全体として捉えることによってこそ理解できるものがある。
生命現象は、分子や原子の運動法則だけでは捉えきれない。
機械論パラダイムの限界を超える思考として期待されているのが、生命論パラダイムである。
生命論パラダイムは、全体を全体として捉えようというホリスティックな考え方に基礎をおく。
生命体は、全体としてある固有の性質を発現するのであって、その性質は構成要素の中には存在しない。
つまり、要素から全体を復元することはできない。
その意味で、部分の総和は全体にならない。
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コメント
≪生命論パラダイム≫の≪ホリスティック≫な考え方で【数そのモノ】を見る。
十進法で表象できる自然数【1 2 3 ・・・】は、西洋数学の成果としの数学用語(e π)、虚数(i『動的作用を持つ』)そしてオイラー等式「数学における最も美しい定理」の贈り物として【オートポイエーシス】で見られる。
西洋数学の成果としの数学用語での記述を『カオス表示』と呼ぶことにする。
数学共同体の呈示する自然数【0 1 2 3 ・・・】の、 その成り立ちの【0 1】の
【1】は、一・二・三・四次元においてヒエラルキー構造の『カオス表示』で呈示でき、それぞれの次元の表象できている【1】の【数そのモノ】の数の観念(概念)を認知する。
『離散的有理数の組み合わせの多変数創発関数論 命題Ⅱ』と『自然比矩形』(≪不定域イデアル≫)とは、≪ホリスティック≫な考え方で【数そのモノ】を創っている。
『自然比矩形』(≪不定域イデアル≫)は、数理哲学としての作用素(0 1 ∞)と『身体がする数学』として『1➡0 0➡1』から虚数(i『動的作用を持つ』)を見つけ出した。
≪生命論パラダイム≫から自然数【0 1 2 3 ・・・】を俯瞰すると【数そのモノ】は、動的に捉えられ生命を宿しているとも言えよう。
一・二・三・四次元に表象できる【数そのモノ】を『縮約(縮退)自然数』と呼ぼう。
投稿: | 2018年9月16日 (日) 05時43分