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2013年5月18日 (土)

「もんじゅ」22年間の運転の実態/原発事故の真相(70)

高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の点検漏れ問題は、わが国の原子力ムラの実態を映し出しているようである。
「夢の」核融合技術へミスリードしてきた広報、報道。
馴れ合いともいえる安全管理。

高速増殖炉とはどういうものか?
単純化していえば、「核融合反応」を人為的に作り出して、そのエネルギーを利用しようということである。
いわば、太陽表面で起きているのと同様な反応を、この地球上で実現しようということである。
まさに「夢の技術」であるが、その難易度は核分裂を利用した原発よりもずっと難しいであろうことは、容易に想像できる。

原子力技術は「核燃料サイクル」と呼ばれる図式を前提としている。
Photo_2
http://blog.goo.ne.jp/teramachi-t/e/5f85ae153c2440b60f9f9a031e4a8761

「もんじゅ」はこのサイクルにおいて、要の位置を占めている。
すなわち、「使用済み核燃料」を再処理して プルトニウムとウランを取り出し、混合燃料を高速増殖炉などで燃焼して、さらにそこからプルトニウムとウランを取り出して利用しようという計画である。

「もんじゅ」の歴史を見てみよう。
1991年というから22年前のことであるが、5月18日(すなわち今日)、試運転を開始した。
4年後に発電を開始するが、翌年1995年には冷却用ナトリウム漏えい事故が発生し運転を停止する。
運転を再開したのは、15年後の2010年5月。
しかし再開から4ヶ月足らずで、炉内に機器が落下して、また運転中止。
そして今月15日に、大量の機器点検漏れの対応を問われ3回目の運転再開中止となった。
試運転からの22年間で、もんじゅが稼働できたのは、たった5年あまりであるが、これまでに1兆円以上が使われた。
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/2/1252.html

客観的に見れば、計画は破たんしていると考えるべきだろう。
ある元素が他の元素に変化する現象を利用した核技術は、『現代の錬金術』にもたとえられる。
錬金術は、現実問題として、すなわちコストを考慮すれば成り立たない、ということだ。

このことから、産経新聞のように、逆立ちした推進論も主張されている。

 核燃料サイクルの中核施設である高速炉が動かないと、使用済み燃料から再処理して出たプルトニウムの扱いが問題となる。
 プルトニウムとウランを混合した混合酸化物(MOX)燃料は、高速炉の代わりに既存の原発で使っていた(プルサーマル)が、生み出したプルトニウムを使い切れていない。高速炉は余剰プルトニウムの削減のため、「燃焼炉」として使うことも可能だ。
 日本は国内外で核分裂性プルトニウムを約26・5トン保有している。計算上、約4400発分の核兵器が造れる。核燃料の再処理は非核兵器保有国の中で日本だけに認められており、プルトニウムの大量の保有は国際社会から懸念を招く可能性がある。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130515/dst13051522350013-n1.htm

高速炉が現実に動かせない以上、上記のような主張は成り立たない。
「贔屓の引き倒し」というべきであろう。
日本原子力研究開発機構の安全管理についても、甘い評価を続けてきたことが分かった。

 機構の業務評価は二〇〇五年の発足以降、機構による自己評価と文科省の有識者委員会による二本立てで実施してきた。安全面のほか、もんじゅ研究開発や業務効率など約四十項目ある。
 もんじゅの研究開発では、トラブル続きのため、順調であることを示す「A」ばかりとはいかず、努力が必要な「B」や改善が必要な「C」の評価も少なくない。
 しかし、原発の安全性を保つために不可欠な機器の点検などが含まれる「安全確保の徹底」の項目では、自己評価、文科省の評価とも、東海研究開発センター(茨城県東海村)の放射能漏れや隠蔽(いんぺい)が発覚した〇七年度の評価がBだったことを除けば、全てAの評価を付けていた。
 その一方で、点検漏れは一〇年八月ごろから拡大し、昨年十一月に発覚した段階では、安全上重要なものも含め約一万点の機器で点検時期が守られず、うち半分は点検されずに放置されていた。
 評価とは正反対の状況で、今月十五日の原子力規制委員会で「こういう組織が存続していること自体が問題」(島崎邦彦委員長代理)などと批判された。

Photo_3
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013051890070200.html

政府(主として自民党)や推進者の側で、作られてきた虚構(すなわち神話)が暴かれつつある。
原子力政策全般を見直さざるを得ないのではないか。

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