放射性物質漏洩事故の認識/原発事故の真相(71)
茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構の実験施設(J-PARC)で、放射性物質が施設の外に漏れ出す事故が起きた。
J-PARCは、直径約500メートルの大型加速器など3台の加速器を組み合わせた実験施設で、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構でつくるJ-PARCセンターが運営している。
加速器の中で陽子のビームをほぼ光速にまで加速し、金などの標的にぶつけて飛び出る中性子やニュートリノを研究に利用する。
この事故により、施設に出入りしていた何人かが内部被ばくした。
問題は、機構が国に報告したのは、事故発生から1日以上も後だったことである。
想定内の汚染と判断し、放射線量を下げるため排気ファンを作動させたことにより、施設外にも漏洩したとみられている。
事故を過小評価していた―。機構は会見で、報告の遅れについてこう説明し、謝罪した。施設外への漏えいを認識してから、国への報告を判断するまで5時間近くもかかっている。安全協定を結んでいる茨城県への通報さえも、1日以上後になった。
これでは、事故を機構内部だけで処理しようとした、と疑われても仕方がない。
福島第1原発の事故後、原子力事業の安全性に対する市民の不安は高まっている。25日に運動会があった東海村の学校には、保護者から「事故をニュースで知ったが大丈夫か」「自分で放射線量を測定してから参加を決めたい」といった電話が寄せられている。
原発に限らない。核燃料サイクル政策の要とされる青森県の再処理工場や「もんじゅ」、東海村の施設群などで、どんな実験が行われ、安全策や危機管理がどう図られているのか、市民に十分には伝えられていない。
安倍晋三政権は安全性が確認された原発は再稼働させ、核燃料サイクル政策は維持する方針を示している。実行する前に、原子力事業全体の情報公開度を高め、市民が「安全性」を判断できる環境を整えなければならない。
http://www.shinmai.co.jp/news/20130526/KT130525ETI090007000.php
http://news.goo.ne.jp/picture/sankei/nation/snk20130526063.html
連日の原子力関連ニュースである。
原発とJ-PARCは、性格が全く違う。
にもかかわらず、安全意識には共通するものがあるように思える。
事故に対する意識である。
ハインリッヒの法則というものがある。
1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するという風に定式化されている。
http://www.tamakyo.com/tkb/iryokaigo_anzentaisaku.html
この法則の含意は、インシデント(ヒヤリ・ハット)を軽視するなということであろう。
J-PARCの事故が拡大しないことを祈るが、軽微であったとしても軽視していると、重大事故に繋がる可能性が高まる。
機構の態度は「KY:(時代の)空気読めない」であるが、「KY」は危険予知の略語でもあることを思い起こすべきだろう。
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