将棋ソフトの進歩と解説ソフトの可能性/知的生産の方法(52)
「第2回電王戦」は、コンピュータが3勝1敗1分けという結果に終わった。
コンピュータの圧勝といっていいだろう。
3月30日に第2戦で現役のプロ棋士が初めて敗れ、以後はコンピュータの2勝1分けである。
⇒2013年4月 4日 (木):佐藤可士和さんの「キレ」と「コク」/知的生産の方法(46)
将棋ソフトの歴史は浅い。
誕生は1975年というからまだ40年足らずである。
早稲田の大学院生だった滝沢武信早稲田大学教授らによる。
しかし、初期のソフトは弱く、80年代になっても小学生名人に簡単に負けてしまう程度だった。
90年代後半に、コンピュータの処理速度や記憶容量などの向上と連動して、力量が急成長した。
Windowsが登場した頃であり、大型機からのダウンサイジングという形で、パラダイムシフトが起きたのである。
2000年代になると、棋譜から自動学習する能力を身に付け、成長は加速した。
東京新聞2013年5月1日
そして3月下旬からの第2回電王戦である。
プロ棋士5人と5種類の将棋ソフトが対戦した。
戦績は以下のようであった。
東京新聞2013年5月1日
トップ棋士三浦弘行八段を破った「GPS(ゲーム・プログラミング・セミナーの略)将棋」を開発したのは、金子知適東大准教授である。
金子氏の感想の中で、特に興味を持ったのは、「将棋解説者になるコンピュータを開発中」という点である。
現在は、「将棋は強くてもしゃべりが下手」ということらしい。
以前にソムリエロボットの開発のニュースを見たのを思い出した。
NECシステムテクノロジー株式会社が2007年11月29日付でプレスリリースしたものである。
当社が三重大学と共同で開発した、ワインの種類や味を判別できる「ソムリエ・ロボット」が、2007年6月にギネス新記録に認定され「はじめてのロボット・ソムリエ」としてギネスブックに掲載されました。
・・・・・・
当社は、2006年7月に独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて、三重大学との産学コラボレーションにより「健康・食品アドバイザーロボット(味見ロボット)」を開発しました。
味見ロボットは、食品に赤外線を照射した時の赤外線吸光度スペクトルを分析することによって、チーズ、肉類、パン類等、数十種類の食品を判別することができます。
「ソムリエ・ロボット」は、味見ロボットの機能を強化したしたもので、センサーの分析精度を向上することで、より判別が難しいと言われるワインについて、数十種類の銘柄や味などを判別することができます。
http://www.necst.co.jp/topics/20071129/index.html
やはりこのリリースから読み取る限り、「判別する」能力は優れているらしいが、それを表現することについては触れていない。
表現することは、当時は余り力点が置かれていなかったのであろう。
しかし、ソムリエは、キザとも思えるような表現で、テイストを表現する。
将棋の解説もワインの解説も、表現力が問われる。
多分、それはヒトの最後の砦であろう。
その分野で、ヒトの優位性はいつまで保てるのであろうか?
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