アベノミクスの危うさ/花づな列島復興のためのメモ(221)
株式市場が異常である。
日経平均は、5月23日(木)に、15,942.6円とほぼ1万6千円の高値を付けたあと、14,483.98まで急落した。
その後も徐々に落ち着いてきてはいるものの、一触即発的不安定感を引きずっている。
昨年末の政権交代以来、安倍内閣の経済政策、いわゆるアベノミクスがもてはやされ、株価は全体として急騰してきていた。
上がり方としては、バブル期以上との見方もあるくらいのペースである。
⇒2013年5月21日 (火):長期不況からの脱出かバブルの再来か?/花づな列島復興のためのメモ(217)
アベノミクスの「好調さ」は、しかし何となく危うさを感じさせる。
確かに「次元の違う」金融政策のインパクトは大きいであろう。
しかし、金融政策や財政政策だけで、失われた20年から脱却できるのだろうか?
それで、3本目の矢である「成長戦略」である。
しかしその具体的な中身は定まっていないようである。
「新潮45」の6月号に、佐伯啓思氏が、「反・幸福論」という連載の第29回として、『「砂漠の経済学」と「大地の経済学」』という文章を書いている。
そこにアベノミクスの「次元の違う」金融緩和が、かなりアクロバティックなもので、失敗する可能性もかなりあると書いている。
そもそも人々の「期待」を動かそうというのがムリなのではないか。
佐伯氏は、史上の有名なバブルであるジョン・ローのバブルをレビューする。
ローは、スコットランドの裕福な家に生まれ、18世紀初頭にフランスに渡ってルイ15世の摂政オルレアン公に取り入る。
そして財政難にあった王宮を救う政策をとった。
自らの銀行を作り、銀行券を発行して王宮に貸し付ける。
銀行券の信用を担保するのは、彼の行おうとしていた事業である。
それはミシシッピー開発と称するもので、その事業主体としてインド会社を設立し、そこから上がる収益が発見の裏付けになるというものだった。
ミシシッピー開発の評判は高く、インド会社の株も高騰して、キャピタルゲインを得ようと人々は金融街に殺到した。
しかし、ミシシッピー開発の実態はデタラメのものだった。
利益はインド会社の株価によるものであり、自分の刷った銀行券の生む利益が銀行券の信用となり、それを担保として銀行券を刷る。
循環構造である。
しかし、この循環が無限に続かないことは明らかである。
いつか歯車は逆に回りだす。
ローの図式は見方によれば、現代でも生きている。
ベンチャーキャピタルファンドの説明図は以下のようである。
http://www.sbinvestment.co.jp/venture/structure.html
この図の、資金調達がインキュベーション事業の収益を担保にして発行されたものだとしたら、非常によく似た図式である。
この事業が架空のものであったという詐欺話もよく耳にする。
しかし、仮に架空の事業であったとしても、お金が回っている間は、綻びは顕在化しない。
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