佐藤可士和さんの「キレ」と「コク」/知的生産の方法(46)
いま最も目覚ましい活躍をしているクリエーターとして、佐藤可士和さんの名前を挙げても異議を唱える人はほとんどいないだろう。
佐藤さんの名前を初めて目にしたのは、何の雑誌だったかは忘れたが、立川市にある「ふじようちえん」という幼稚園のリニューアルのプロジェクトの紹介記事であった。
同幼稚園の園舎は、ドーナツ型という実にユニークな形をしている。
http://yousakana.jp/?p=1183
数々の賞を受賞しているので有名であるが、設計をしたのが佐藤さんというわけではない。
手塚建築研究所を主宰している手塚貴晴さんと由比さんという夫婦の建築家である。
佐藤さんは何をしたのか?
佐藤 可士和、 齋藤孝『佐藤可士和の 新しい ルール づくり』(2013年03月)によれば、建築に関してのコンセプトは、手塚貴晴・由比夫妻が立案した。
「仲間はずれのない空間」ということで、丸くつなげることによって端をなくした。
佐藤さんはその前工程をやった。
つまる、「どういう幼稚園を作るのか」ということで、「園舎自体が巨大な遊具」というものであった。
私は佐藤さんの仕事に興味を抱き、『佐藤可士和の超整理術』日本経済新聞社(2007年9月)を購入して読んだ。
シンプルなデザインのしゃれた体裁の本で、クリエーターの著書らしいと思った。
内容は6章に分かれている。
1章 問題解決のための“超”整理術
2章 すべては整理から始まる
3章 レベル1「空間」の整理術-プライオリティをつける
4章 レベル2「情報」の整理術-独自の視点を導入する
5章 レベル3「思考」の整理術-思考を情報化する
6章 整理術は、新しいアイデアの扉を開く
随所にヒントが散りばめられている。
たとえば下図は、「3章」のプライオリティの説明である。
空間の整理が情報と思考にも当てはまることが分かる。
「断捨離」と言われるが、整理の要諦は捨てることであろう。
そして、整理して捨てるものを決めるのは「キレ」ということであろう。
⇒2013年1月17日 (木):「キレ」の思考と「コク」の思考/知的生産の方法(28)
佐藤さんの仕事は確かに「キレ」を感じるが、必ずしも「キレ」と「コク」が対立するわけではないことを示す事例でもある。
先日、将棋ソフトのボナンザが現役棋士に初めて勝ったというニュースが流れた。
将棋のプロ棋士5人と5種類のコンピューターソフトによる団体戦「第2回将棋電王戦」の第2局が30日、東京都渋谷区の将棋会館で行われ、後手の佐藤慎一四段(30)が141手で、将棋ソフト「ポナンザ」に敗れた。現役のプロ棋士が公の場で将棋ソフトに負けたのは初めてで、進化し続けるコンピューターソフトの実力を見せつけた。第1局はプロ棋士が勝利しており、これで対戦は1勝1敗となった。
プロ棋士が初敗北=将棋ソフト「ポナンザ」に—電王戦
松田 卓也『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』廣済堂新書(2012年12月)によれば、コンピュータの進歩は、2045年には、人間を凌駕する知能を獲得すると言われている。
「2045年問題」と呼ばれ、一部では話題になっているようである。
「凌駕する」という意味は、意識や感情面を含めて、ということである。
CPUに使われる半導体の集積度が18カ月で2倍になるという「ムーアの法則」がこの先も成立すれば、ということである、この問題をどう考えるかは人それぞれであろう。
しかし、ルールが決まっている世界では、いずれにせよ時間の問題であることはボナンザが示している。
佐藤さんと齊藤さんが意気投合しているように、これからは「ルールづくり」の力が問われることは必定であろう。
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