鳥インフルエンザの拡大をどう防ぐか/因果関係論(21)
国際獣疫事務局(OIE、本部パリ)が、中国で死者が出ているH7N9型鳥インフルエンザについて、危機感を示す認識を表明した。
ウイルスに感染した鳥を見分けるのが難しく、対策が「かなり異例な状況」だからという。
OIEはH7N9型のウイルスについて「家禽(かきん)類に対する病原性は非常に低いが、人に感染すれば重い症状をもたらす可能性がある」と指摘。検査で陽性反応を示した鳥を見ただけでは病気だと全く分からないため、「ウイルスを見つけるのは極めて困難だ」と対策の難しさを認めた。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013041200066
鳥インフルエンザは新型ウイルスによるものだが、ウイルスというのは相当に厄介な代物である。
⇒2013年4月 5日 (金):鳥インフルエンザとウイルスの正体
鳥インフルエンザの問題は、2003年に起きたSARSのことを思い出させる。
SARSに比べれば、中国における情報公開はずっと良くなったと言われる。
しかし、どうしても不信感が拭えない。
SARSとは、Sever Acute Respiratory Syndrome(重症急性呼吸器症候群)の略で、最初の症例は、広東省で2002年11月に発見され、中国本土、香港などで感染が拡大した。
AIDS=後天性免疫不全症候群、BSE=牛海綿状脳症など、アルファベットで表記される疾病は、当然新しく発見されたものであるが、当初はその原因や感染のメカニズムなどが不明なため、不気味な感じが拭えない。
ホモ・ファーベルとも言われるように、技術は人間と他の動物を区分けする要素の一つである。
そして、人間の脳は、勝手に活動して創造力を発揮してしまう。
強制的にあるいは自発的に、それを抑制することは不可能なので、技術の発展には限界がない。
新しく発生(発見)されている疾病は、技術発展への反作用という側面があるように感じられる。
例えば、BSEの場合は、草食動物の牛が、肉骨粉を飼料にしたことが原因だとされている。
つまり、食物連鎖という生態系のメカニズムを、人為的にかく乱した結果だろう。
2003年4月14日 CDC(Centers for Disease Control and Prevention:アメリカ疾病予防管理センター)は、SARSの原因とされているコロナウイルスについて、ゲノム配列を決定した。
おもに飛沫感染によって広がるが、飛沫は大きいため、飛ぶ距離は通常1メートル以内とされる。
通常、インフルエンザウイルスは、例えばヒトからヒトへといった同種の間で感染するものである。
しかし、インフルエンザウイルスの性質が変異することによって、ヒトに感染しなかったインフルエンザウイルスが、ヒトへ感染するようになり、さらにはヒトからヒトへ感染するようになる。ヒトに感染しなかったものがヒトの間で感染する位まで大きく変異した(突然変異型の)インフルエンザウイルスのことを新型インフルエンザウイルスという。
英科学誌ネイチャー電子版が、鳥の体内で3種類のウイルスの遺伝子が互いに入り交じってできた可能性があるとの専門家の分析結果を報じた。
ネイチャーによると、北京にあるWHOのインフルエンザセンターがウイルスの遺伝子データを公開。日本の専門家などの分析で、8本ある遺伝子のうち、ウイルスの表面の形を決めるH7型とN9型の遺伝子はそれぞれ、欧州からアジアにかけて分布する異なる2種類の鳥インフルエンザのものと極めてよく似ていた。 残りの6本の遺伝子はいずれもアジアに広まっている別の鳥インフルエンザのものとほぼ一致。3種類のウイルスに感染した鳥の体内で遺伝子が入り交じって新たなウイルスができた可能性がある。一方で、豚の体内でウイルス混合が起きたとみる専門家もいる。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130404154529614
鳥インフルエンザの発症例は、次第に増えている。
中国上海市政府は11日、H7N9型鳥インフルエンザに感染した男性(74)が同日死亡したと発表した。上海での死者は6人目。中国では上海、江蘇、浙江、安徽の1市3省で死者10人となった。上海では死亡した男性を含む3人、江蘇省でも男性2人の感染が新たに確認され、国内の感染者は38人に拡大した。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201304/2013041100948
技術の進歩によって、今までにはなかった「新種の心配事」が生まれてくることは不可避だろう。
水俣病の巫覡を繰り返さないためにも、先行指標や予兆をどう見出すか、あるいは環境の異変をどう感知するか、大きな課題といえよう。
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