アナロジー思考/知的生産の方法(48)
アナロジーといえば、頭に浮かぶのは「比喩」であろう。
たとえば、次のような文脈では、比喩=アナロジーである。
アナロジー(比喩)というのは小説に欠かせないものです。同時に、人に何かを伝える時にもアナロジーを上手く使えば、伝えやすくなります。
例えば、こんがらがったプログラミングのコードを「スパゲティ」と呼ぶのも、アナロジーの一種ですね。
もっとも笑える25のアナロジー(比喩)
比喩は代表的なレトリックであり、以下のように分類される。
直喩
隠喩
換喩
提喩
諷喩
直喩は、「(まるで・あたかも)~のようだ(ごとし、みたいだ)」のように、比喩であることを読者に対し明示している比喩のことである。
「赤ん坊の肌はまるで綿飴のようにふわふわだ」というように。
換喩(メトニミー)は、表現する事柄をそれと関係の深い付属物などで代用して表現する比喩である。
例えば、「食卓」は「食事のための卓(テーブル)」の意味。
そこから転じて、そこに載る食事あるいは料理を指す語でもある。
「東宮」(皇太子の居所)が、皇太子自身を指す。
「白バイ」で白バイ隊員(警察官)を指す。
「霞ヶ関」=日本の官庁。
「永田町」=日本の国会。
提喩(シネクドキ)は、上位概念で下位概念を表したり、逆に下位概念で上位概念に置き換えたりする比喩である。
具体的には
あるカテゴリと、それに含まれる個別要素
全体と、その一部分
物体と、その材料
諷喩(アレゴリー)は、寓意に使われるようなたとえのみを提示することで、本当の意味を間接的に推察させる比喩である。
「抽象的」なものごとを「具体的」なものに当てはめていうような方法である。
例えば、小人物に大人物の心はわからないの意を、「燕雀安ぞ鴻鵠)の志を知らんや」といって、悟らせるような使い方である。
よく言われるように、「新しいアイデアは、既にどこかにあるアイデアの組み合わせ」である。
生命は生命からしか生まれない(今のところ)。
同じように、アイデアは既存のアイデアからしか生まれない、ということである。
しかし、ただ単に既存のアイデアを持ってくるだけでは、新規性はない。
また、単に新しいだけでは、価値がない。
特許の要件としていわれるように、新規性&進歩性があってこそ、価値あるアイデア・考えといえよう。
⇒2012年2月27日 (月):ビジネスモデルとビジネスモデル特許/「同じ」と「違う」(43)
それでは、どうやって価値あるアイデア・考えを作り出すか?
往々にして、アナロジーによって思考が閃く。
例えば、ケクレはベンゼン環の構造を夢から考えついたという逸話がある。
ケクレは、ドイツの代表的な化学者の一人であり、ベンゼンの構造の発見者として有名である。
当時、ベンゼンの分子式がC6H6 であることは確認されていたが、その構造は解明されておらず、彼もその構造について非常に悩んでいた。1865年のある日、彼が暖炉のそばでうたた寝をしていると、1匹の蛇が自分の尾をくわえてぐるぐるまわる夢をみた。そのことをヒントにして、6個の炭素原子を1つのリング状の構造にすることを思いついたといわれている。その後、このリング状の構造は、ベンゼン環とよばれ、多くの化学者によってその構造が論議されてきたが、分光学の発達によりその六角環の構造が正しいことが立証された。このとき彼が示したベンゼン環の表し方(ケクレの式)は、有機化学において欠かすことのできない表記法の一つとなっている。
http://www.nararika.com/butsuri/kagakushi/kagaku/benzen.htm
要するに、新しい見方によって、価値が生み出されるのではなかろうか。
2011年1月30日 (日):馴質異化と異質馴化/「同じ」と「違う」(27)
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