脳と言語と思考/知的生産の方法(50)
私たちは、いわゆる五感によってi外界の状況を感受する。
http://smi-md.at.webry.info/201204/article_10.html
この中で、情報量は圧倒的に視覚が大きなウェイトを占める。
http://smi-md.at.webry.info/201204/article_10.html
五感は、ヒトに限らず動物もも同じように、あるいはヒト以上に鋭い場合がある。
ヒトが他の動物に対して優越しているのは、五感の直接的な感受性ではない。
第二信号といわれる言語を発達させたことによる。
有名な「パブロフの犬」という実験により、以下のようなことが明らかになった。
犬に餌を与える時、ベルを鳴らしてから餌を与え続けると、ベルを鳴らしただけで唾液を分泌するようになる。
ベルの音に反応して唾液を分泌するのは、後天的に作り出された反応であって、ベルを鳴らすという条件によって生み出される反応である。
これを、条件反射と呼ぶ。
犬の場合には、ベルの音という直接的な刺激に基づく反応であるが、人間の場合には、言語によって形成される反応がある。う
ベルという言葉で、ベルを鳴らすのと同様の反応をする場合がある。
ベルという言葉が信号の信号、つまり第二信号として作用していることになる。
2008年2月16日 (土):外界からの刺激の「意味」
言語は、モノに直接そなわった性質を反映する面もあるが、それとは別個に社会的、歴史的に形作られるという面もある。
第二信号系によって人間は高次の神経活動すなわち知的活動を行うことが可能となった。
動物は本能によって生きているが、人間では本能にかわって、第二信号が行動を制御している。
生命の究極的な目的が「生きる」ことであるとするならば、動物では生きるための具体的方法を本能が設計している。
これに対し、人間では、生きるという目的の認識やそのため方法・手段の認識を第二信号系の作用を通じて行っているのである。
その結果として、人間は抽象的な概念操作ができるようになった。
言語を獲得した結果として、と言うよりも、脳の増強と言語の獲得とは、共進化と言った方が適切かもしれない。
共進化というのは生物学的に正確ではないのかも知れないが、下図のように相互にフィードバックして、というイメージである。
http://www.jaist.ac.jp/ks/mot/12100.html
岸田秀氏は、『唯幻論論 (岸田秀コレクション) 』青土社(1997年5月)などにおいて、人間はすべての本能が壊れており、幻想(観念)によって行動する動物であると言っている。
外界の刺激に直接反応しないで、第二信号系を駆使して、思考によって事前に様々な想定をするのは、行為の結果が必ずしも期待する結果に直結しないからである。
「思考は行動のリハーサル」と言われるように、あらかじめ行動の結果を予測して、それをもとに行動の判断をすることが、人間に固有の能力といってよい。
「想定外」という言い訳は、思考力不足と同義ではなかろうか。
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