新しい情報の生まれ方/知的生産の方法(41)
「情報」とは何か?
さまざまな人が定義を試みているが、「情報」という言葉で表そうとする内容自体が多様なので、所詮決定版の定義などはあり得ない。
言語学に、シニフィエとシニフィアンという概念がある。
石川幹人『人間とはどういう生物か: 心・脳・意識のふしぎを解く』ちくま新書(1201)には、次のような図が載っている。
つまり「情報」というシニフィアンで表象しようとするシニフィエが必ずしも同じではないということである。
ここではそのことに深入りせずに、実務者の立場で、「情報=役に立つ知らせ=役に立つ記号の集合」と考えよう。
「役に立つ」というのは、実用的に役に立つというようなことだけではなく、文芸や音楽などのように感性に作用するような刺激も「役に立つ」ものといえよう。
「役に立つ」という限定は、無意味な記号の集合を排除するためである。
もちろん、役に立つか立たないかは、人によって異なる。
ある人にとって有用であっても、他の人にとって無用ということはあり得る。
それでは、新しく「情報」が生まれるのはどういう風にだろうか?
何もない真空の状態では、情報は生まれない。
情報が生まれるためには、そこに原材料となるものがなければならない。
その原材料もまた情報である。
つまり、ある情報Aが存在して、それに別の情報Bが何らかの形で反応して情報Cになる。
情報A*情報B⇒情報C
*はとりあえず不明である。
何らかの化学反応に似ているが、反応した後でも原材料の情報Aと情報Bはそのまま残っている。
それがモノと情報の大きな差異である。
情報Aと情報Bを反応させる反応器は、人間の脳である。
知的生産の方法というのは、目にすることができない脳という反応器の中の反応の様子を、何らかの形で可視化しようという試みである。
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