道徳教育は有効か?/花づな列島復興のためのメモ(198)
政府の「教育再生実行会議」は、道徳教育を教科にするよう求める提言を出した。
道徳の教科化は第1次安倍政権が設置した教育再生会議が平成19年6月に提言。文部科学相の諮問機関である中央教育審議会で検討されたが、見送られた。公明党は当時から反対の姿勢で、福田康夫政権に「道徳は教師や親も含めた大人が教え伝えるべきで、教科になじまない」と申し入れた経緯がある。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130307/stt13030700320000-n1.htm
教育のあり方が、大津市の中2男子のいじめ自殺や大阪市の部活動体罰による自殺事件などにより、大きな社会問題になっている。
⇒2012年7月10日 (火):大津市中学生自殺事件/花づな列島復興のためのメモ(106)/因果関係論(13)
⇒2013年1月26日 (土):体罰問題をどう考えるか?/花づな列島復興のためのメモ(184)
命を大切にしたり、他人を思いやったりする心を育むことの重要性は、改めて指摘するまでもないだろう。
しかし、それが道徳を教科にすることによって、実効性があるのかどうかは疑問であろう。
しても効果があるのか。
道徳教育の現状は、Wikipediaによれば、以下のようである。
現在は学校でおこなわれる道徳教育については学習指導要領に規定されており、「道徳教育は、学校の教育活動全体を通じて行うもの」であるとしている。即ち学校において行われる全ての活動は一つの例外もなく道徳的であることが求められる。
さらに、小学校、中学校、中等教育学校の前期課程には道徳の時間が年間あたり35単位時間(1単位時間は、小学校45分、中学校50分)設けられ、各学校によって異なるが、だいたい1週間あたり1校時割り当てられるようになっている。ミッション系や仏教系、新興宗教系の私立学校では「宗教」の時間に代替することが可能である。欧米にはこういう時間がなく、宗教教育などで代替されている。イギリスでは宗教の時間とともに、PSHEの時間が道徳教育と広義の社会的スキルの学習を担当している。
県立高等学校で道徳の授業がある例は少なく、茨城県と埼玉県のみである。2013年度からは千葉県でも導入される。
道徳を教科にすることはこれまでも繰り返し唱えられてきた。
森喜朗元首相の私的諮問機関、教育改革国民会議が、2000年に提言し、2007年には第1次安倍内閣の教育再生会議が「徳育」の名称で教科にすることを求めた。
しかし、文部科学相の諮問機関、中央教育審議会で実現は難しいとの意見が相次いだことにより、実現はしなかった。
見送られた理由は、点数評価、専門の教員免許、検定教科書の使用などにおける難しさである。
「教育再生実行会議」の提言は、これらの問題点をどうクリヤーするのか必ずしも明確ではない。
教科書を使って成績を評価するとなると、特定の価値観を押し付けることになりかねない。
道徳というのは心の問題である。
成績評価をするとなると、「良い子」でいることを競わせることになりかねない。
それではいじめは陰湿化する可能性があろう。
心の問題は、評価が難しい。
「キレ」の思考だけでは割り切れないであろう。
教科としてではなく、文学に親しんだり、哲学のテーマを探究したり、美術に触れたりというような総合的な学習の中で、本人の「気づき」を誘発することが必要ではないか。
いわば「コク」の世界をどう教えていくかという課題であり、学校教育の教科の問題に閉じ込められる問題ではないように思える。
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