避難生活のストレス/原発事故の真相(65)
災害により住み慣れたわが家から離れて避難生活を送ることには、筆舌に尽くしがたいストレスがかかる。
私は幸いにしてそのような災害に遭ったことはないが、自宅を離れて生活したことはある。
入院生活である。
脳梗塞を発症して救急車で搬送された急性期の病院における入院生活は、ほとんどワケも分からないうちに始まり、あっという間に過ぎた。
回復期に転院したリハビリ専門病院は、人里離れた山奥に立地していた。
ここには4か月半ほど滞在(?)した。
急性期と併せて約160日であったが、終わりごろには、入院生活が耐え難い様子が家族にはよく分かったようである。
私自身は、転院当初はせいぜい1か月程度長くても2か月でシャバに復帰できると考えていたので、転院時の関係者のカンファレンスで、「目標3か月」と言われた時には、「そんなに長く・・・」という気がした。
しかし、途中で考えが変わり、制度的に入院可能なギリギリの期限まで入院リハビリしたいと考えるようになった。
自分で考えていたより回復しないことを、自分の身体で思い知ったこともあるし、自宅では思うようなリハビリ訓練を続けられないという話を聞いていたこともある。
しかし、4人部屋で、基本的にはプライバシーというものがない生活は、やはりストレスであった。
個室もあるが、当然差額料金を負担しなければならないし、個室は個室で他者との触れ合いもないので、別のストレスがあろう。
特に脳血管障害のリハビリにとって、会話をすることは重要である。
同室の人と会話をすることは、ストレスの要因でもあったが、それ以上に重要なことと理解していた。
それでも、いずれ限界が来る。
自分の状態が改善してくるに連れ、客観的に観察する余裕も出てくる。
中には明らかに精神状態が正常ではない患者もいる。
これが近未来社会の縮図だと考えたが、あまり明るい未来はないように思えた。
入院の場合は、それでも自業自得とも考えられるから、仕方がないと思うしかない。
しかし、災害による避難生活は、他力によるものである。
少なくとも直接的には自分が原因ではない。
避難場所にもよるであろうが、ストレスは入院に比べてはるかに大きいと思われる。
東日本大震災は、原因を、地震・津波と原発事故の2つに分けて考えられる。
後者の原因は前者ということになろうが、前者は天災、後者は人災である。
今日の東京新聞に、天災と人災とでは、「影響の尾の引き方が違う」という復興庁の調査結果が紹介されている。
震災や事故後の避難中などに亡くなった震災関連死の認定数は、宮城、岩手、福島の被災三県で二千五百五十四人で、半数以上の千三百三十七人を福島が占める。本紙の調べでは福島の震災関連死者のうち、少なくとも七百八十九人は原発避難者だった(いずれも三月十日までの集計)。
今回、復興庁が調査したのはこのうち、震災から一年が経過した昨年三月十一日から同九月末の半年間の福島の震災関連死者。この時期の全国の関連死者四十人中、三十五人が福島に集中していたためだ。死亡に至る経緯などを市町村や医療機関から聞き取り、分析した。
三十五人は南相馬市、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、浪江町、葛尾村、飯舘村の八市町村の出身。五十代が一人で、ほかは六十歳以上だった。複数回答による死亡原因の調査では、避難所生活での肉体的・精神的疲労が45%で一番多く、避難所などへの移動中の疲労が24%だった。
報告書の中で、福島県の医療関係者は「『生きているうちに今の避難先から出られない』という不安や、生きがいも、希望も、生きる意欲も持てないというメンタル面の影響も大きい」と指摘している。
医療関係者は、二〇一一年十二月~一二年二月の施設での死亡率が前年同期比一・二倍になっている現状を挙げ「全体の死亡リスクがあがった。死亡は氷山の一角」とも懸念している。
同庁の担当者は「仮設住宅より住み心地の良い公共住宅の早期再建が必要。国として財政支援をしたい」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013033090070102.html
宮城、岩手、福島3県の違いについては先日も触れた。
⇒2013年3月11日 (月):2年という時間の長さと短さ/花づな列島復興のためのメモ(199)
原発事故による避難者の場合、将来の見通しに不確定要因が強い。
また、事故直後の国の情報に翻弄され不信感を拭えていない。
心の整理がつかないのだ。
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