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2013年3月13日 (水)

原発関連自殺の実態/原発事故の真相(58)

自殺のニュースは胸が痛い。
特に、学生・生徒が、いじめや体罰を苦にして、というようなニュースは辛い。
自殺に至るまで、どんなにか悩んだことだろうか。
私くらいの年齢になると、どんなに大きく思えるような悩みも、ほとんどの場合、時間が解決してくれることを体験上知っている。
しかし、中学生や高校生にとっては、その時間が耐えられないのだろう。

東京電力福島第一原発事故に関連した自殺もかなり出ているようだ。
しかし、その実態は明らかではない。
何が原因で自殺したかは、本人が亡くなっている以上、明確にすることには困難が付きまとう。

学校でのいじめによる自殺についても、学校関係者、教育委員会が、いじめの事実があったことは(しぶしぶ)認めても、次のように言うのは常套的であくる。
「自殺を予測することはできず、直接の原因はわからなかった」
⇒2010年11月10日 (水):いじめと自殺の因果関係/因果関係論(7)
⇒2010年11月27日 (土):いじめと自殺の因果関係(続)/因果関係論(8)
⇒2012年7月10日 (火):大津市中学生自殺事件/花づな列島復興のためのメモ(106)/因果関係論(13)

原発事故による場合、因果関係はより不分明であろうし、遺族には、自殺を表沙汰にしたくない心理も働くのではなかろうか。
そもそも、原発関連死の統計も不十分である。
⇒2013年3月11日 (月):2年という時間の長さと短さ/花づな列島復興のためのメモ(199)

 厚生労働省が震災後、自治体に例示した関連死認定の基準は、自殺について「発作的なものでなく、震災を契機としたストレスによる精神的疾患に基づくもの」を認定対象にしている。震災関連死に詳しい津久井進弁護士は「福島の場合、インフラや住宅の整備で復興への道筋が見えた過去の震災とは、将来に対する絶望感がまったく違う」と指摘。「医学的な要因だけでなく、社会的背景が原因の場合も認められるべきだ」と指摘する。 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013031302000105.html

厚労省の基準は間違いではないだろうが、自殺者の心理に対する洞察が欠けているのではなかろうか。
「発作的なものでなく」というが、自殺をするその瞬間というのは、「発作的なもの」である場合があると思われる。

東電も自殺との因果関係を認めたがらないようである。

 原発事故で避難を強いられ、11年7月に自殺した五十崎(いそざき)喜一さん(当時67歳)の妻栄子さん(63)が「避難生活でうつ病を発症し自殺した」として東京電力に約7600万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が26日、福島地裁であった。東電側は「避難生活と自殺の因果関係が認められない」と述べるにとどまった。五十崎さんは記者会見で「誠実に対応して、早く救済してほしい」と訴えた。
 意見陳述で、栄子さんは「働き者で家族思いだったお父さん(喜一さん)の心が、原発事故による避難生活で下り坂を転げ落ち始めた。お父さんを返してください」と述べた。
 東電側は、原発事故と喜一さんのうつ病発症との因果関係を不明とし、「因果関係に関する精神科医の意見書がない限り、反論できない」と主張した。
 また、妻が避難生活の影響で自殺したとして、東電に損害賠償を求めている渡辺幹夫さん(62)の第3回口頭弁論でも、東電側は「精神科医の意見書がない」との主張を繰り返した。第1回公判から約5カ月、審理は遅々として進んでいない。弁護側の広田次男弁護士は「東電は消極的な対応に終始して、裁判を引き延ばしている」と法廷で苦言を呈した。
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20130227ddlk07040265000c.html

原発事故の損害賠償は、第一義的には東電が負うべきであろうが、到底東電だけでは賄いきれないだろう。
国策として推進してきた以上、国も一体的に損害賠償にあたるべきではなかろうか。

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