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2013年3月17日 (日)

情報生産地はなぜ集積するか?/知的生産の方法(43)

ある情報Aが存在して、それに別の情報Bが何らかの形で反応して新しい情報Cが生まれる。
⇒2013年3月10日 (日):新しい情報の生まれ方/知的生産の方法(41)

情報A*情報B⇒情報C

この(*)という作用は、脳の中の作用である。
ところで、人間の脳は、コンピュータと比較される。
中国語でコンピュータのことを電脳というのは、人間の脳と同様の働きをするということであろう。

しかし、脳の研究が進めば進むほど、少なくとも現在の方式のコンピュータと人間の脳との間には大きな隔たりがあることが認識されるようになっている。
例えば、人間の脳では、左脳と右脳という役割分担があるが、コンピュータにはそういうしくみが組み込まれていない。
また、人間の脳には主観や自己主張が存在するが、コンピュータには存在しない。
「キレ」はコンピュータでも可能であろうが、果たして「コク」はどうであろうか?

コンピュータが行っている情報処理は、プログラムに定められた等価的な変換であって、少なくとも現時点ではクリエイティブ(自己組織的・発見的)な情報処理ということではない。
今のところクリエイティブな作業は、人間の独擅場である。

とすれば、人と人が触れ合うことは、情報創造において重要である。
いくらインターネットが発達して、ICT(情報通信技術)時代になったといえ、それは変わらない。
シリコンバレーのような、情報創発が偏在する地域が生まれるのはこうした理由であろう。

わが国の国土政策は、1961年に策定された「全国総合開発計画」以来、1987年に策定された「第四次全国総合開発計画」に至るまで、一貫して地域間の均衡ある発展を基調としてきた。
情報通信技術の進展によって、地域間格差が解消されることが期待されている。
距離的なバリアーを小さくし、情報・知識の東京一極集中が緩和されるという展望である。

ようやく現在の「21世紀の国土のグランドデザイン」において考え方の大きな転換があり、複数の国土軸、すなわち西日本国土軸(いわゆる太平洋ベルト)に加え、北東国土軸、日本海国土軸、太平洋新国土軸の4つの国土軸が相互に連携することにより形成される多軸型の国土構造を目指すこと、とされた。
目標年次を2010年から2015年までとされているが、目標年次近くになって、東日本大震災が起きて、国土政策も大きな打撃を受けた。
震災を受けて、国土強靭化がいわれているが、結果として東京一極集中への流れを変えられなかったこれまでの方向を転換させることができるであろうか。

地域間格差は現状ではますます拡大していると見るべきであろう。
知識産業化が進めば進ほど、自然発生的には、地域的な「デジタル・デバイド」が拡大するとみる方が妥当ではなかろうか。
現実に存在するイノベーション活動の地域的な偏在を解消するためには、東京以外の場所にテクノリージョン=ハイテクベンチャー企業の集中地域・典型例がシリコンバレー=を創造することが条件となる。

テクノリージョンを形成して行くためには、次の三つの要素が揃うことが必要条件であるとされる。
 A 知識の源泉(大学、研究所などのテクノロジーの中核となる科学技術の発信基地)
 B 資金と経営ノウハウ(ベンチャーキャピタルやエンジェルなど)
 C 地域コーディネーター(AおよびBをその地域に根づかせるための努力する人)
ここで重要なことは、「地域」という小規模の地理的範囲が要であることだろう。
「距離的な近さ」がイノベーション活動を活性化させるということである。

情報通信技術で可能なのは、データに近い情報であって、知識とか知恵と呼ばれるような情報のやり取りは、face to faceが重要なのではなかろうか。
むかし、筑波に学園都市が形成されつつあったときに、赤提灯がないのが欠陥ではないか、と言われた。
果たして現状はどうなっているであろうか。

静岡県でも、「ファルマバレープロジェクト」が推進されている。
ヒトゲノムの解析において重要な役割を果たしてきた遺伝学研究所や県立がんセンターを中核的な研究施設とし、既にかなり集積が進んでいる医薬品に関する産業基盤を活かして、新たなテクノリージョンを形成していこうというプロジェクトである。
⇒2012年2月25日 (土):立国の鍵としての富士山麓地域/花づな列島復興のためのメモ(27)

しかしながら、人が集い、交流するための魅力はまだないと言わざるを得ないのではないか。
テクノリージョン足り得るためには、赤提灯に限らず、文化的な施設が集積していなければならない。
しかし、西武百貨店沼津店の撤退に象徴されるように、中核となるべき沼津市は疲弊傾向から抜け得ていない。
⇒2013年1月31日 (木):西武沼津店の閉店と地方再生の可能性/花づな列島復興のためのメモ(186)
Photo
西武が撤退し、灯りの消えた建物(沼津駅前)

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