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2013年2月22日 (金)

弥生時代の北九州と南九州/やまとの謎(82)

足立倫行氏の「ひととき」に掲載されている『古代日向の光と影-天孫降臨の地の不思議』に、宮崎県埋蔵文化財センター所長・北郷泰道氏の見解が紹介されている。
南九州では、北九州と同時期に稲作が始まった。
しかし、南九州ではシラス土壌と低湿地への海水の浸入のため、水田が広がらなかった。

弥生時代の北九州や畿内が水田七、畑三なら、南九州は水田三、畑七だった。
北九州や畿内が、稲作による権力集中的な集村型社会であるのに対し、南九州は個別性の強い散村型社会であり、社会構造がまるで異質だった。
弥生時代の南九州は海運も発達していて、青銅器を経ることなく、磨製石器からすぐに鉄器に移行し、北九州の青銅器文化圏とは対立した。
このような特徴を持つ古代の南九州が、『魏志』倭人伝に登場する狗奴国ではないか、というのが北郷氏の説である。

これは、邪馬台国が宮崎平野にあったとする中田力氏の『日本古代史を科学する 』PHP新書(1202)とは相いれない。
考古学的知見はもちろん重要である。
北郷氏は、古墳時代に入って広大な南九州を束ねたのは諸県君であるとする。
本庄古墳群を基盤とした諸県君は、生目古墳群に移った頃から力を増した。
生目古墳群の大古墳(100m超)の被葬者が、景行天皇の妃になった日向髪長大田根、御刀媛、その子で日向国造の祖とされる豊国別皇子ではないか。

諸県君は、娘たちを相次いで王妃に差し出すことで勢力を伸ばした。
しかし、海水の侵入により新田開発が困難になって、西都原の台地へ勢力を移した。
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西都原の古墳群は諸県君グループの共同墓地で、ニニギノミコト、コノハナサクヤヒメの墓という伝承があって陵墓参考地に治定されている男狭穂塚は諸県君牛諸井、女狭穂塚は髪長媛ではないかとする。
髪長媛の子と孫の世代に大事件が起きる。

第20代安康天皇が弟の妃として髪長媛の娘を迎えたいと、大草香皇子に使者を送った。
大草香皇子は喜んで豪華な冠を使者に託したが、使者は欲に目が眩んで冠を横領し、大草香皇子が反対であると虚偽報告をした。
鮟鱇天皇は、大草香皇子を攻め滅ぼしてその妻を自分の皇后にし、子供の眉輪王も引き取った。

事情を知った眉輪王は安康天皇を殺害した。
安康天皇の弟のオオハツセ(雄略天皇)は、眉輪王を匿った円大臣もろとも焼き殺した。
天皇家の一大不祥事である。

こうした事件を背景に、日向に対する罪の意識が記紀編纂時にも作用し、神話の舞台として別格の扱いとなったのではないか、というのが北郷説である。
狗奴国を受け継ぐ日向は、現実的にも重要な地域であった。
6世紀前半に継体天皇が筑紫君磐井を倒し、朝鮮半島への北回り航路を掌握して、南回り航路を中継していた日向は凋落した。

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コメント

安土桃山末期、江戸初めの1608年に、ロドリゲスというポルトガル人が日本に布教に来て30年ほど滞在し、作ったのが「日本大文典」という印刷書籍です。400年前の広辞苑ほどもあるような大部で驚きです、さらに家康の外交顧問もしていました。スペイン国王からはメキシコに帰る難破船救助のお礼に、「家康公の時計」をもらっています。
古代から伝えられてきた日本の歴史について知ることができる タイムカプセル でしょうか。これが戦国時代直後までの古代史の認識で、倭国年号が522年善記から大宝まで記載され其の後に慶雲以後の大倭年号が続きます。明治以後にはこの歴史認識は失われてしまったようです。日本大文典の倭国年号の存在は、ウィキなどにも記載されていません。ついでに 倉西裕子著 『「記紀」はいかにして成立したか』 続日本紀記載の720年「日本紀」は普通古代史専門家はこれを「日本書紀」と読み替える前提ですが、理由無く読み替えられない、別物という論証がされています。
宜しくお願いします。

投稿: いしやま | 2014年1月 4日 (土) 08時18分

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