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2013年2月12日 (火)

地口における「キレ」と「コク」/知的生産の方法(36)

地口という言葉遊びがある。
「デジタル大辞泉」では、次のような解説が載っている。

じ‐ぐち〔ヂ‐〕【地口】

1 世間でよく使われることわざや成句などに発音の似通った語句を当てて作りかえる言語遊戯。「下戸(げこ)に御飯」(猫に小判)などの類。上方では口合いという。
道路に沿った敷地の長さ。また、家屋の間口。

じぐちあんどん【地口行灯】
 
江戸中期ごろから流行した、地口を書いた行灯。多くは戯画を描き添え、祭礼の折などに路傍に立てたり軒先に掛けたりした。

各地で、町興しとして、地口行灯が点されるイベントが行われている。
三島市でも、中心街で「三島宿 地口行灯」が7〜12日に開かれた。
今年は川柳と合わせて1277点の応募があり、地口部門大賞には三島南高の水越愛さんの作品「一食即髪のクッキー」(元句・一触即発の空気)が、準大賞には日大三島高の弦間彩華さんの「訳あり物ばかり」(元句・竹取物語)が選出された。
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地口の評価軸はどう考えられるか?
三島市の場合は知らないが、地口のそもそもの趣旨からして、元句がよく知られていることわざや成句であって、その元句とかけ離れた内容になっていること、発音が元句と似通っていることなどが挙げられよう。
大賞作も準大賞作も悪くない出来だとは思うが、抜群というわけではなさそうである。

たとえば、次の作などは、大賞に勝るとも劣らないと言えないだろうか?
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「金は転写のまがい物」とある。
元句は、「金は天下の回りもの」で、よく知られているし、音も十分に似ているだろう。

あるいは、次の作はどうであろうか?
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「党首選をリードするのは保守安倍、右寄り左撃ちやはり首相」である。
元句は、「投手戦をリードするのは捕手阿部、右投左打やはり主将」であった。
発音は実にうまく音を捉えている。
しかし、元句が「世間でよく使われている」という条件を満たしていない?

隣の「押忍無礼」というのも面白いと思った。
確かにオスプレイは礼儀正しいとは言いかねるのではないか。
「キレ」と「コク」という視点で考えると、「キレ」は音の嵌り具合、「コク」は作品の自立性(元句からの意味の乖離度合)ということになるであろうか?

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