地口における「キレ」と「コク」/知的生産の方法(36)
地口という言葉遊びがある。
「デジタル大辞泉」では、次のような解説が載っている。
じ‐ぐち〔ヂ‐〕【地口】
1 世間でよく使われることわざや成句などに発音の似通った語句を当てて作りかえる言語遊戯。「下戸(げこ)に御飯」(猫に小判)などの類。上方では口合いという。
2 道路に沿った敷地の長さ。また、家屋の間口。
各地で、町興しとして、地口行灯が点されるイベントが行われている。
三島市でも、中心街で「三島宿 地口行灯」が7〜12日に開かれた。
今年は川柳と合わせて1277点の応募があり、地口部門大賞には三島南高の水越愛さんの作品「一食即髪のクッキー」(元句・一触即発の空気)が、準大賞には日大三島高の弦間彩華さんの「訳あり物ばかり」(元句・竹取物語)が選出された。
地口の評価軸はどう考えられるか?
三島市の場合は知らないが、地口のそもそもの趣旨からして、元句がよく知られていることわざや成句であって、その元句とかけ離れた内容になっていること、発音が元句と似通っていることなどが挙げられよう。
大賞作も準大賞作も悪くない出来だとは思うが、抜群というわけではなさそうである。
たとえば、次の作などは、大賞に勝るとも劣らないと言えないだろうか?
「金は転写のまがい物」とある。
元句は、「金は天下の回りもの」で、よく知られているし、音も十分に似ているだろう。
あるいは、次の作はどうであろうか?
「党首選をリードするのは保守安倍、右寄り左撃ちやはり首相」である。
元句は、「投手戦をリードするのは捕手阿部、右投左打やはり主将」であった。
発音は実にうまく音を捉えている。
しかし、元句が「世間でよく使われている」という条件を満たしていない?
隣の「押忍無礼」というのも面白いと思った。
確かにオスプレイは礼儀正しいとは言いかねるのではないか。
「キレ」と「コク」という視点で考えると、「キレ」は音の嵌り具合、「コク」は作品の自立性(元句からの意味の乖離度合)ということになるであろうか?
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 藤井太洋『東京の子』/私撰アンソロジー(56)(2019.04.07)
- 暫時お休みします(2019.03.24)
- ココログの障害とその説明(2019.03.21)
- スキャンダラスな東京五輪/安部政権の命運(94)(2019.03.17)
- 野党は小異を捨てて大同団結すべし/安部政権の命運(84)(2019.03.05)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 藤井太洋『東京の子』/私撰アンソロジー(56)(2019.04.07)
- 内閣の番犬・横畠内閣法制局長官/人間の理解(24)(2019.03.13)
- 日本文学への深い愛・ドナルドキーン/追悼(138)(2019.02.24)
- 秀才かつクリエイティブ・堺屋太一/追悼(137)(2019.02.11)
- 自然と命の画家・堀文子/追悼(136)(2019.02.09)
「知的生産の方法」カテゴリの記事
- 『日日是好日と「分かる」ということ/知的生産の方法(182)(2019.01.02)
- 祝・本庶佑京大特別教授ノーベル賞受賞/知的生産の方法(180)(2018.10.02)
- この問題は、本当の問題です/知的生産の方法(179)(2018.09.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント