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2013年2月 7日 (木)

情報の漏洩と事実の隠蔽/原発事故の真相(56)

日本原子力発電敦賀原発の活断層調査で、事務作業のトップが、評価報告書案を日本原子力開発幹部に事前に渡していた。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は6日の定例記者会見で、「組織の問題というより、今の時点では個人の考え違いがあったと思っている」と述べた。
これを個人の問題として済ませるならば、事態は繰り返されるだろう。
行為そのものは、個人が起こすものであり、個人的な問題といえばそうに違いない。
しかし、そういう個人が発生しないようにするのが、組織の責任であろう。

証券等の取り引きにおけるインサイダー取引の場合を考えてみよう。
インサイダー情報を利用するのは、ほとんどの場合個人であろう。
しかし、個人が不当に利用することがないよう、規定を設けたり、教育をしたり、風土を形成するのは組織の役割である。
調査側の発言はこの辺りを衝いている。

6日午前の規制委の定例会合では、活断層調査を担当した島崎邦彦委員長代理から「個人の問題ではなく、組織全体に隙があったのでは」との発言があった。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201302/2013020100854&rel=y&g=soc

原子力規制委員会は、再発防止策として事業者との面談のルールを定めた内規の改正を決めた。

 内規は職員が単独で電力会社などと面談することを禁じているが、名刺交換などを想定した「儀礼上のあいさつ」は対象外で、面談しても公表していなかった。
 名雪氏は単独での面談で原電幹部に報告書案を漏洩。規制庁はあいさつを5分以内に限定する改正案を示したが、委員から「例外なく対応すべきだ」との指摘があり、あいさつも2人以上の同席を必要とした。面談記録はすべて公表する。
 名雪氏は昨年12月以降、原電幹部らと8回面会。1月22日、庁内の執務室で原電幹部に報告書案を公表前に渡し、今月1日に更迭された。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130206/crm13020611270005-n1.htm

名雪氏の更迭は当然であるが、規則を改定しても、魂が入らなければ実効性はない。
情報の漏洩と事実の隠蔽はメダルの裏表であろう。
東電が国会事故調に虚偽の説明をして、調査を妨害していたことが明らかになった。

 東京電力が、福島第1原発1号機の現地調査を申し込んだ国会事故調査委員会に対し、原子炉建屋内が実際には光が差しているのに「真っ暗」と虚偽の説明をしていたことが分かった。国会事故調は、緊急時に原子炉を冷却する「非常用復水器」が地震で壊れた可能性があるとして現地調査を計画したが、この説明で断念した。事故調の田中三彦元委員は7日、調査妨害だとして、衆参両院議長らに再調査を求める要望書を提出した。
・・・・・・国会事故調の事故原因究明チームのメンバーは、非常用復水器が地震で破損した恐れがあるとみて、4階を現地調査する方針を決め、
東電に申し入れた。
・・・・・・玉井部長は撮影日が、建屋が放射性物質の飛散を防ぐためのカバーで覆われる前だったとしたうえで「現在はカバーに覆われて真っ暗」と説明。放射線量が高い区域もあり、建屋内に入って調査するのは危険であることを強調し同行を拒否んだ。
・・・・・・東電広報部は玉井部長の説明について「カバー設置前だから明るく、設置後は真っ暗というのは事実誤認だった。正確に確認しないまま答えた。でも意図的にやったことではない」としている。
 国会事故調は、昨年7月に報告書をまとめた後、解散している。

http://mainichi.jp/select/news/20130207k0000e040180000c.html

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朝日新聞2013年2月7日

国会事故調が現地調査をすれば、何が分かったのだろうか?
それは、東電にとって、どう具合が悪かったのだろうか?

天網恢恢疎にして漏らさず。
東電は隠蔽することにより、いっそう深く墓穴を掘ったような気がする。
国会事故調は、国政調査権に基づいて調査を行っている。
その調査を虚偽の説明で妨害するとは、当然重罪であり刑事罰の対象でもあろう。
そのリスクを冒してまで、守ろうとした事実を知りたい。

国会事故調の報告書は、重要な機器・配管類の損壊が、津波ではなく地震により起きた可能性を、全面的には否定できない、とする点が他の事故調と異なるポイントであった。
⇒2012年7月25日 (水):政府事故調の報告書/原発事故の真相(41)

「非常用復水器が地震で破損した恐れがあるとみて」現地調査をしようとしたのだろう。
これを必死に食い止めたということは、破損の原因は津波だけではなく地震の結果であること示すようなモノが現場に残っていたのではないか。
津波対策だけに焦点を絞ると、再び「想定外」のことが起きることになろう。

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