円安と経済成長の両立は可能か?/花づな列島復興のためのメモ(193)
アベノミクスという言葉が流行っている。
安倍晋三首相が、第2次安倍内閣において掲げた一連の経済政策を指している。
デフレ経済からの脱却を目指し、インフレターゲットを設定して、大胆な金融緩和措置を講ずるという金融政策を柱にしている。
素朴な疑問としては、日本銀行の独立性はどうなるのか、ということがある。
日本銀行法は次のように定めている。
(日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第三条 日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2 日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。
安倍首相は、総選挙の時から、従来の日銀の政策に批判的であった。
世論調査で首相の最有力候補とみられている自民党の安倍晋三総裁(58)は、日銀に2%のインフレ目標を受け入れるよう求めている。これは日銀がめどとして公表している1%の2倍だ。デフレ下にある日本の消費者物価指数はゼロ%近辺かゼロ%を下回る水準となっている。「幸いにも来年は日銀総裁の交代時期だ」と安倍氏は述べた。
新政権は9人で構成される日銀政策委員の過半数を、金融緩和にもっと積極的な人材に交代させることが可能だ。
安倍氏は日銀が自身の要求に従わない場合、1998年に改正・施行された日銀法を見直すことも視野に入れていると表明している。これは中銀の独立性を良しとする現在の経済学的常識に逆行する脅威だ。再選を気にする政治家達は、将来のインフレ懸念よりも、目先の経済成長を重視する傾向があると考えられている。
衆院選で脅かされる日銀の独立性
既に白川総裁が任期を前にして辞任を表明するなど、政府のテクニカル・ノックアウト勝ちとなっている。
後任がどうなるかは未定だが、もちろん国会承認人事の1つである。
公正取引委員長の国会同意人事案が事前報道されたということで一悶着あったばかりである。
民主党が豹変(ひょうへん)したのは、輿石東参院議員会長が主導した「抵抗優先」の国会対策に批判が高まったからだ。そもそも、杉本氏の人事は「民主党が与党時代に各党に根回ししていた案」(幹部)という負い目もある。池口修次参院国対委員長も13日、今さらながら「もともと(事前報道が)賛否に影響を与える話でない」と本音を漏らした。
ただ、今回の混乱で明らかになったのは、野党がその気になれば同意人事の手続きをストップできるという「事前報道ルール」の破壊力だ。
http://sankei.jp.msn.com/smp/politics/news/130213/plc13021323170027-s.htm
アベノミクスは、円安・株高を招来し、世論の支持率も高いようである。
安倍内閣の支持率は昨年12月の発足以来、上昇を続け、支持率が下がり続けることが多かった最近の内閣と明らかに違う傾向を示している。
デフレ脱却などを目指す経済政策「アベノミクス」が評価されていることに加え、これまでの政権運営で目立った失点がなかったためとみられる。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130211-OYT1T00424.htm?from=ylist
日本の上場企業の多くは、製造業が占めている。
大部分は輸出産業であり、円安が有利である。
その意味で、アベノミクスは現時点では、すなわち(超)短期的には、成功と言っていいであろう。
しかし、アベノミクスの「3本の矢」は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起す成長戦略である。
民間投資は需要があってこそ、実現する。
自国通貨を弱体化させる政策で、本当に成長が可能なのか?
金融を緩和し円安に誘導するというのは、お札をたくさん刷って(発行して)お札(通貨)の価値を下落させるということである。
私には、その理路が分からない。
円安で喜ぶ輸出主導の製造業というのは、概して言えばこれからの衰退産業であろう。
衰退産業を保護しても有効需要は生まれない。
増税とインフレが相まって、中長期的にはむしろ倹約志向がたかまるのではないか、つまり有効需要の減少である。
結果として、経済成長は阻害されるのではないか。
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