原発は本当にコスト優位性があるのか?/花づな列島復興のためのメモ(182)
原子力規制委員会の専門家チームにより、地震や津波に対する原発の安全基準の新基準の骨子素案が示された。
原子力規制委員会は22日、地盤をずらす活断層の上に原発の重要施設を設置してはならないことなどを明文化した新安全基準の骨子素案を公表した。同日開かれた地震と津波の安全基準について検討する有識者会合で示された。これまでも、国の耐震設計審査指針で活断層の上に原子炉を設置することは禁止されていたが、基準に明文化することで、法的根拠を持った規制が行えるようになる。
骨子素案では、活断層の定義も変更。従来は「12万~13万年前以降」に活動した断層を活断層としていたが、「40万年前以降までさかのぼり評価すること」と拡大させた。近くの活断層に引きずられて動く断層も、活断層と同等に扱う方針。
近くに活断層がある場合は、確実な揺れの予測ができないことを踏まえ、余裕を持って原子炉建屋などへの影響を評価しなければならないとした。
一方、津波については、施設ごとに海底地形や地質構造などから想定津波を策定。想定津波に襲われた場合でも、重要施設に海水を流入させない構造にすることとした。
福島第1原発で電源喪失の要因となった崖崩れ対策については、斜面が崩壊しても「施設の安全機能が影響を受けない設計であること」を求めている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130123-00000118-san-soci
活断層と原発の関係については何度か触れた。
⇒2012年4月28日 (土):活断層の上の原発/花づな列島復興のためのメモ(57)
⇒2012年8月29日 (水):直下に活断層があっても原発運転?/原発事故の真相(44)
⇒2012年11月 3日 (土):大飯原発の活断層をどう考えるか/花づな列島復興のためのメモ(157)
⇒2012年12月14日 (金):活断層の上の原発を止められない?/花づな列島復興のためのメモ(173)
まったく当然のことであると思うが、やっと活断層が疑われる地盤には原発は建てられないことの制度的な対応ができるということである。
問題の活断層の定義問題について、復習しておこう。
活断層は、これまで12万~13万年前以降に動いたものと定義されてきた。
⇒2012年10月24日 (水):活断層定義問題と大飯原発の稼働/花づな列島復興のためのメモ(154)
新基準で、「40万年前以降」に強化される見込みだったが、素案では、「12万~13万年前の活動が否定できないもの。資料が十分でなければ40万年前にさかのぼって検討する」という表現に落ち着いた(東京新聞)。
具体的な自然科学的な事象についても、「活断層」の定義が問われているわけである。
「極めて近き時代まで地殻運動を繰り返した断層であり、今後もなお活動するべき可能性のある断層」を特に活断層(かつだんそう、active fault)という、のが根本の定義である。
「極めて近き時代」というのが曖昧のように感じられるが、地学的には、「新生代第四紀」である。
要するに、「新生代第四紀」とは、地質学の区分における最近代(現代)ということだろう。
そして、「第四紀」とは、現時点の学界の定義は、以下のようである。
新しい第三紀と第四紀の境界は、従来の新第三紀と第四紀の境界だった181万年前の鮮新世・更新世境界から、258万年前の鮮新世ピアセンツィアン・ゲラシアン境界に移動させられた。これは、第四紀の研究者の間では258万年前を第四紀の始まりとすることが多いことを反映させたものである。
Wikipedia新生代
必ずしも安全基準が学説と一致しているべきというつもりはないが、その場合は、合理的な判断であることを説明する必要があろう。
特に、安全基準において、危険側に設定するのならば、基準策定の経緯を含め十分な開示がなされるべきである。
また、「原子炉や原子炉建屋を除く重要機器の一部は、地盤のずれなどを吸収するような設計であれば例外扱いできる」ことになっているという。
このような例外規定に関しても、なぜ例外を設けるのか、例外の条件はどのようなものかについて、明確にすべきであろう。
安全基準が従来より厳しくなったわけであり、必要な対策と想定される事故処理を行った場合、原発が本当にコスト優位性があるのか再検証してみることが必要ではないか。
⇒2011年12月14日 (水):原発の発電コストはいくらと見るのが妥当なのか?/原発事故の真相(13)
⇒2012年11月25日 (日):原発の立地をどう判断するか?/花づな列島復興のためのメモ(162)
2013年1月14日 (月):除染の実態(続)-汚染の拡散と健診の不正/原発事故の真相(54)
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