西武沼津店の閉店と地方再生の可能性/花づな列島復興のためのメモ(186)
沼津駅前の西武百貨店が、今日(1月31日)をもって閉店した。
ショッピングセンターとの競合激化で売上高が大幅に減り、赤字基調からの転換は困難だと判断した結果である。
不採算店の閉鎖でコストを削減することは、常道ではあろうが、長い間地域の“顔”として機能してきたので、市民の間に寂寥感があるのは否めない。
店の5階連絡通路に、「お客さまからのメッセージ」が掲示されている。
その一部が、読売新聞2013年1月27日号に紹介されていた。
「小学生の頃、横浜へ単身赴任の父が帰ってくると大食堂で食事し、おみやげも買った。父も亡くなり店も閉店。思い出が遠くなるようでさみしい」
「父のボーナスが出ると家族で必ず来店」
「『家中、西武で買った物だらけだ』と笑っていた亡き父」
「子供連れで来るのが何よりうれしかった。エスカレーターに乗りはしゃいでいた子供たちが58歳、56歳。感謝です」
「大学を卒業する時、スーツを買った」
「勝負服は西武の服。それが祖母から母、私へ引き継がれた暗黙の習慣。なくなるなんて考えられない」
「高校生の頃、リップを買ったりし、背伸びしたおしゃれを覚えた」
「僕と妻が出会ったのはこの沼津西武。たくさんの思い出がつまった店。とてもさみしい。ありがとう」
「駅に降り立ち、西武のネオンが見えると『帰ってきたなあ』と思えた。そんなシンボルが無くなってしまう」
それぞれの人生と共にあった。
ローカル紙の沼津朝日新聞の2013年1月29日号には、四方多恵子さんの『ぬまづの華 西武』という投稿が載っている。
五十五年前の沼津。チンチン電車が通る駅前にそびえ立った百貨店。店内のエスカレーターに戸惑いながらも、新しい空気にふれられるうれしさで、皆、東京人になったような気がした。
オープンしたのは1957年である。
私はこの年中学生になったのだが、沼津から御殿場線というローカル列車に乗った地方に住んでいたので、それこそ“都会”の雰囲気であった。
西武百貨店の地方展開の1号店(軽井沢に夏だけオープンしていた店があったそうであるが)で、キャッチコピーの「沼津で東京のお買い物を」も新鮮だった。
オープン当時、都まんじゅうという洋風まんじゅうを、焼きながら販売するのが物珍しかった。
閉店セールで感謝印の都まんじゅうを売っていた。
55年という時間は、ものごころついてからの大部分になる。
線香花火の最後のように、「大入り満員」が続いているが、沼津の実力からすれば閉店・撤退も致し方がないとは思う。
かつては先進的な商店街だった「アーケード通り」も、完全にシャッター商店街化している。
最近は、交通機関の結節点のような施設の商業施設化が盛んである。
東京スカイツリー(そらまち)が代表例だろう。
私もお上りさんよろしく出かけてみたが、肝心のスカイツリーは70分待ちということで諦めたが、そらまち商店街は賑わっていた。
スカイツリーだけでなく、羽田空港、東京駅、大阪駅等リニューアルの事例は多い。
沼津はかつて静岡県東部における中心都市であった。
東海道新幹線が開通する前は、国鉄の基幹的な機関区だった。
駅弁も大いに繁盛していた。
沼津と三島の間を路面電車(合図の鐘がチンチンというのでだろうが、上記の四方さんの文章にあるように、チンチン電車と呼んでいた)が走っていたし、駅と沼津港の間に貨物専用線があった。
http://saiseiron.com/archives/3487475.html
沼津港は再開発されて結構な賑わいをみせているが、駅周辺はこれからどうするのだろうか?
鉄道高架化が懸案事業であるが、市民の声は賛否両論である。
私は、今更膨大なお金をかけても回収ができないと思うので、他の方策を探るべきだと思うが。
沼津という街は時代の変化に立ち後れてしまった。
今となっては、逆転の発想で、弱みを強みに転換するしかないのではないか。
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