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2013年1月27日 (日)

『「いき」の構造』に学ぶ概念規定の方法/知的生産の方法(33)

九鬼周造は、男爵九鬼隆一の四男として1888年に生まれ、東大文科を卒業後、ヨーロッパに留学した。
ヨーロッパで、ベルグソン、ハイデッガー等に学び、29年に帰国して京大教授となる。
そして、学問追究と並行して祇園で派手に遊んだことで知られる。
日本文化とヨーロッパ文化を、共に身をもって体験した人であり、それが彼の哲学のテーマとして生きている。

彼は、日本人の精神構造を理解するためのキーワードとして「いき:粋」という「日本独特の」言葉を選び、その中に「わが民族に独自な「生き」かたの一つ」が含まれているのではないか、と発想した。
⇒2013年1月21日 (月):「コク」の思考と『「いき」の構造』/知的生産の方法(31)
⇒2013年1月22日 (火):抽象的概念を規定する方法/知的生産の方法(32)

それでは九鬼は、「いき」という現象をどう考察しているか?

九鬼は、「いき」の徴表として、まず異性に対する「媚態」を挙げる。
異性との関係がないところに「いき」は成立しないが、異性と完全なる合同をとげて緊張性を失う場合も「いき」は消失する。
第二の徴表は、気概を示す「意気」である。
また、第三の徴表として、あっさり、すっきり,瀟洒などに通じる「諦め」を挙げる。
上記を総合して、最終的に、「『いき』を定義して『垢抜して(諦)、張りのある(意気地)、色っぽさ(媚態)』ということができないであろうか」としている。

そして、外延的構造については、「我々はここに、『いき』と『いき』に関係を有する他の諸意味との区別を考察して、外延的に『いき』の意味を明晰ならしめねばならない」として、「上品」「派手」「渋味」を挙げ、これらの関係を吟味して有名な直方体の構造に到達する。
Ws000000

村山昇『「キレ」の思考 「コク」の思考』東洋経済新報社(1211)では、次のように書いている。

 九鬼の場合、こうした風流をめぐるびにおいて美的価値を一つひとつ言葉上で定義するのではなく、直六面体のモデル上に相対的な位置関係で示すというアイディア自体が優れて独創的である。モデル化はある意味、アート作品をこしらえる作業にも通じるところがある。

他のものとの相対的な関係を示すのに、われわれはよくポジショニングという2次元平面での位置関係の図を用いる。
たとえば、ビール業界(銘柄)については、以下のような図で示される。
Ws000000
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/const/lessons/marketing/_asset/pdf/marketing002.pdf

上図では、「キレ-コク」が同一軸の対極として設定されているが、コクというのは、「ライト-ヘビー」を含んだ概念のような気がする。
とすれば、下図の如くか?
Photo_2
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20110912/1037729/?P=2

あるいは、政党の公約等を比較するのに使われる。
⇒2012年12月 3日 (月):総選挙における各党のポジショニング/花づな列島復興のためのメモ(167)

われわれは、2次元に馴染んでいる。
紙媒体の制約もあろうが、認識する能力の限界も関係しているように思う。
九鬼は、「いき」の構造を3次元の空間で考えたわけである。

 

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コメント

≪…九鬼は、「いき」の構造を3次元の空間で考えた…≫を、≪…2次元に馴染んでいる…≫で、
数の言葉(自然数)を捉えると、
(π+1)と(π+1)
(eー1) と(eー1) に、
我々の生きる[形態空間(ニッチ)]での時間・空間の
数の言葉(自然数)としての≪…「いき」の構造…≫が、[遇有性]として浮かび上がるようだ。

投稿: 自然数は言葉 | 2021年3月21日 (日) 16時26分

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