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2012年12月12日 (水)

日本原子力発電の公開質問状に対する違和感

日本原子力発電株式会社(日本原電)は、敦賀原発の破砕帯が活断層の可能性が高いとした原子力規制委員会に対して、公開質問状を提出した。
専門家会合の見解見を、「科学的根拠が十分ではない」ということである。
⇒2012年12月11日 (火):敦賀原発は廃炉へ/花づな列島復興のためのメモ(172)

同社の増田博副社長は同日、規制委の事務局を担う原子力規制庁を訪ねて提出。その後、記者会見を開き、「活断層の可能性が否定できないとの見解は、科学的な見地から理解できない。その判断のプロセスを教えてもらいたい」と述べた。廃炉の可能性については、「現時点ではコメントを差し控えたい」と語った。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20121211-OYT1T01250.htm?from=ylist

日本原電は、規制委の専門家調査団に対して、真っ向から勝負を挑んだといえよう。

 日本原子力発電敦賀原発(福井県)の敷地内を走る断層の一種「D-1破砕帯」を原子力規制委員会の専門家調査団が「活断層の可能性が高い」と評価したことについて、調査団の座長役の島崎邦彦委員長代理は12日、規制委の定例会合で「D-1破砕帯は浦底断層と同時に動いて施設に重要な影響を与える恐れがある」との評価結果を口頭で報告した。
 正式な報告は島崎委員長代理が近く報告書としてまとめる予定で、この日の会合では、規制委のメンバーから特段の意見は出なかった。調査団の評価結果については、原電が11日に規制委に公開質問状を提出。田中俊一委員長は報告書の中で原電へ回答することを島崎委員長代理に求めたうえで、「原電が調査を継続すると言っているので、新たなデータが出てきたら有識者で対応していただきたい」と述べた。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121212/dst12121212100010-n1.htm

私は地学の専門家ではないが、日本原電の姿勢に著しい違和感を抱かざるを得ない。
同時に、田中委員長は、「原電が調査を継続する」から「新たなデータが出てきたら有識者で対応」するのは結構だが、それまでの間は稼働はできないという姿勢を明確にすべきだろう。

破砕帯が活断層であるか否かの挙証責任は、日本原電側にある。
日本原電の開示資料は以下のように説明している。

D-1 破砕帯につき、これが少なくとも約9.5 万年前の上載地層を変位させていないこと等を確認したことを説明しました。それにより、当社のこれまでの主張(参考1)である敷地内の破砕帯は「活断層でないこと」および「浦底断層の活動に伴い同時に活動しないこと」をこれまでの根拠に加え、改めて科学的に立証できたと考えております。
http://www.japc.co.jp/news/press/2012/pdf/241211.pdf

問題は、この説明では、専門家会合のメンバーは納得しなかったのである。
公開質問状を投げかける前に、どうしたら挙証責任を果たせるかを真摯に考えるべきである。

日本原電にとっては、敦賀原発が従来通り稼働できるか、それとも廃炉を余儀なくされるかは、組織の存廃に係わる問題である。
同社は、1957年に電力9社と電源開発(当時は国有会社)が共同出資して設立した原発の事業会社である。
現在は東海第2、敦賀1号機と2号機の3基の原子炉を保有しているが、東日本大震災と東京電力・福島第1原発の事故で、現在は3基すべての稼働を停止している。

2012年3月期連結決算の売上高は1460億円、経常利益は93 億円であり、東日本大震災による特別損失を計上して最終損益は129億円の赤字だった。
この期の稼働は実質的にはなかった。
東海第二は昨年3月の東日本大震災で自動停止した。
敦賀1号機は昨年1月から、同2号機は昨年5月7日から、それぞれ定期検査のため停止されており、その後、現在に至るまで発電量はゼロである。

実質的に稼働がなくても売上が計上できているのは、電力会社が基本料金を払っているからである。
言い換えれば、電力会社は実質的に電気を買っていないのにもかかわらず、費用を計上している。
このような費用を積算の根拠にして、電気料金の値上げをするのは、はなはだ釈然としない。

また、廃炉ということになると、日本電源はこの売上も見込めないことになる。
敦賀1号機と2号機が廃炉になれば、日本原電の発電能力は半分以下に落ちる。
建設予定の敦賀3号機、4号機が建設される客観情勢にはないと考えるべきだろう。
日本原電の超過債務は電力会社に波及し、電力会社の経営を圧迫することになる。

電力料金に反映することが予想される。
もちろん消費者の立場からいえば、電力料金の値上げは好ましくない。
しかし、日本原電や電力会社は、当然負担すべき費用を今まで負担してこなかったと考えるべきだろう。
原発のコストを計算し直すべきであるが、定性的な判断でも優位性がないことは明らかである。
電力会社は、費用構造を透明にすべきだ。

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