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2012年12月10日 (月)

深層底流の読み方/知的生産の方法(27)

ビジネスパーソンになじみのある術語として、「SWOT分析」がある。
企業活動に影響を与えるであろうと考えられる要因を分析するフレームである。

Swot Strength(強み), Weakness(弱み), Opportunity(機会), Threat(脅威) の頭文字を組み合わせた短縮語。経営戦略を検討するときは自社の内部状況と自社を取り巻く外部環境を正しく分析することが大切。企業の強み、弱み、機会、脅威の総合的な評価をSWOT分析という。
http://www.s-naga.jp/k-page/10swot.html

しかし、内・外部の環境を的確に分析し認識することは容易ではない。
環境を構成する要素自体、いかようにも考えられるからである。
まして、その動向や将来の姿を捉えることは至難ともいえよう。
とはいえ、仮説的にでも、これらの予測を行わなければ、当てずっぽうで行動することになる。

どうしたら、的確な未来予測をする能力を身につけることができるだろうか?
まず考えられるのは、因果関係から推測できないだろうか、ということであろう。
世の中の事象は、因果関係によって発生している。
結果には、原因がある。
その対応関係を見つけることができれば、未来事象を予測することができる。

将来の人口構成などは比較的定量的に予測可能なものだろう。
今年生まれた人の大多数が、20年後には20歳になる。
死亡率も、20年先の予測をするのなら、先ず安定的と考えていいだろう。
しかし、社会経済的な事象の多くは予測が難しい。
バブル経済の中にいれば、現在がバブルであることやそれがいつはじけるかを予測することは難しい。
物理現象とは異なり、社会的な事象には明確な因果関係が存在するとは限らないのである。

そこで考えられるのは、歴史に学ぶことである。
歴史は1回性のものであるから、厳密な法則などあり得ないだろう。
しかし、抽象化することにより、ある程度の法則性を考えることができる。
問題は、抽象度が高くなるほど現実から遠ざかって、実務などの役にはたたないことである。

われわれは、何をどう見ればいいのだろうか?
戦後生まれで、マスメディアに頻繁に登場する論客の1人に、寺島実郎氏がいる。
Wikipediiaによれば、以下のような略歴である。

寺島 実郎(てらしま じつろう、1947年8月11日 - )は、日本の評論家。多摩大学学長・教授、帝塚山大学特別客員教授、(三井物産経営企画部)三井物産戦略研究所会長、日本総合研究所理事長、新潟県知事泉田裕彦後援会会長を兼任。北海道雨竜郡沼田町出身。

まさに赫々たる肩書きである。
寺島氏は長く三井物産に在籍したビジネスマンである。
しかし、大学の学長やシンクタンクの理事長という仕事の関係から、特定の企業の代弁者としての言説は控え、極力、大局観に立った発言をしているように思える。

たとえば、世紀の変わり目の頃に刊行したものに、『寺島実郎の発言―時代の深層底流を読む』東洋経済新報社 (0112) がある。
Amazonの紹介文は以下のようである。

世紀末から新世紀へ。何事もなかったのごとく、われわれは世紀の壁を越えた。自分が生きる同時代を的確に認識することは難しい。しかし、時代潮流の深層には確実に何か大きな変化が進行している。事象の変転に右顧左眄しない思想の基軸が問われている。日本は米国というトラウマからいつ抜け出すのか。

問題は、ここで言われている「時代潮流の深層」である。
われわれは、とかく目に見える表層の動きにとらわれがちである。
表層は目に見えるが、深層は見えにくい。
表層の変化は早く、深層の変化はゆっくりであろう。
しかし、長期的に見れば、表層の動きを規定しているのは、深層の動きであることがしばしばである。
深層の動きは、偏った立場からではなく、かつ長期的な視野の下でなければ見えてこない。
今回の総選挙においても、表層における政党の多数乱立という現象に、不可逆的な動きがあるのではなかろうか。

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