邪馬台国と『記紀』の年代論/やまとの謎(68)
中田力『日本古代史を科学する 』PHP新書(1202)は、邪馬台国を宮崎平野に比定する。
それが事実かどうかは現時点では検証のしようがない。
ところで、今年は『古事記』1300年という節目の年でもある。
⇒2012年4月19日 (木):入院しました/闘病記・中間報告(42)
邪馬台国と『古事記』などに書かれている日本神話の関係については、どう考えられるであろうか?
日本神話』のハイライトの1つが天孫降臨であろう。
⇒2012年7月 9日 (月):天孫降臨の高千穂峰/やまとの謎(66)
「ノジュール」(JTBパブリッシング)という旅の雑誌に、「『古事記』を旅する」という3回の連載が掲載されている。
11月号が最終回で、天孫降臨以降を扱っている。
筆者の辰宮太一氏によれば、最初の天地創造の部分は、哲理・法則を描いたものであって、物語性は必要がない。
物語が始まるのは、イザナミ、イザナギの段からである。
創造の世界を踏まえつつ、神のファミリーの物語を描いている。
そして、高天原を舞台とする段から、社会の物語になる。
それはさまざまな解釈が可能な物語である。
辰宮氏は、次のように言っている。
神話で重要なのは、そのまま読まないことだ。必ずと言っていいほど、記号化されて隠されたストーリーがある。それを解けば、神の働きも見えてくる。
・・・・・・
ためしに、三柱の御子神のお名前を、音表記にしてみよう。そして稲作に重ねてみると、ほでりは穂出りで稲の穂が出てきました・ほせすりは穂勢りで穂が勢いよくのびています・ほおりは穂降りで穂が頭を垂れましたという、稲の実りを表す描写なのだ。
つまり、邇邇藝能命と木花之佐久夜毘賣命の夫婦神は、稲作の親神ですよと語っているとも読み取れるのだ。
それでは、一見荒唐無稽に思える天孫降臨は、何を意図しているのだろうか?
神界のトップは天照大御神(アマテラス)である。
アマテラスは孫神である日子番能邇邇藝命(ニニギノミコト)に地上を任せることにした。
それは何時のことか?
中田氏は、安本美典氏の提唱した「天皇の即位年数解析法」を援用する。
⇒2008年11月16日 (日):安本美典氏の『数理歴史学』
⇒2008年12月 1日 (月):邪馬台国に憑かれた人…②安本美典と「神話伝承」論
そして敏達天皇以降の在位年数と年代がきわめて高い相関を示していること、飛鳥以前がこの相関曲線から外れることを検証している。
飛鳥以前を以下の4グループに分ける。
神武~開化(1~9)
崇神~仲哀(10~14)
応神~武烈(15~25)
継体~欽明(26~29)
それぞれの平均在位年数を『日本書紀』から計算してプロットしたのが下図である。
上図をみれば、飛鳥以前の天皇の在位年が造作されたものは明らかである。
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