活断層定義問題と大飯原発の稼働/花づな列島復興のためのメモ(154)
原発の耐震設計指針における「活断層」の定義が再検討されることになったという。
東京新聞121024
現在の指針において、「活断層」とは、「13万~12万年前以降に動いたもの」とされている。
ところが、Wikipediaでは、「活断層」は次のように解説されている。
「極めて近き時代まで地殻運動を繰り返した断層であり、今後もなお活動するべき可能性のある断層」を特に活断層(かつだんそう、active fault)という。ここでいう「極めて近き時代」とは新生代第四紀を指す。狭義には、「過去数十万年」を指す場合もあるが、これは多くの場合、活断層の認定が断層の変位基準となる地形の形成年代に深く関わることから設定された便宜的なものであって、その曖昧さが指摘されている。別の定義によれば、「現在の応力場の下で地震を起こし得る断層のうちで、断層面が地表まで達しているもの(地表断層)に限る。ただし、伏在断層であっても断層面の上端が地表近く(およそ1km以下の深度)まで達しているものは、何らかの方法で最近の地質時代における活動を確認することができる。したがって、この種の浅部伏在断層は活断層の範疇に含める。」とされる。活断層では地震が過去に繰り返し発生しており、また今後も地震が発生すると考えられているため、活断層の活動度の評価は、そこを震源として発生する地震の予知に役立つと考えられている。
要するに、「新生代第四紀」のことということであるが、「第四紀」の定義自体が論争になっていた。
現時点では、以下が最新の提案のようである。
第四紀の始まりは、2009年6月に国際地質科学連合 (IUGS) が再定義した公式な地質区分では、258万年前である。従来は181万年前とされていた。258万年前~181万年前のゲラシアンは、これまでの公式な地質区分では新第三紀鮮新世に区分されていたが、新定義では第四紀に含まれることになった。 地球史46億年のうちでは短期間であるが、地球史の現代にあたり、近未来に続いてゆく時期である。
第四紀
地球史の「現代」ということだが、地質学上最も重要な期間であることは間違いない。
その始まりは、258万年前ということであるから、耐震設計指針はきわめて限定的に考えていたということになる。
指針の定義自体が問題になっていたのであり、それを見直そうということである。
この日開かれた関西電力大飯原発(福井県)への規制委断層調査団の初会合の後、記者団に明らかにした。活断層の定義については、平成18年に改定された原発耐震指針で、比較的確認しやすい「13万~12万年前以降に動いたもの」としていた。
しかし、島崎氏は「活断層かどうかの判断は、従来の基準にこだわらない。『12万年前』という数字を、私は使ったことはない」と強調。その上で「40万年までは同じと考えてよい」と述べ、年代にはこだわらず古い年代まで遡(さかのぼ)って調査する意向を示した。
この日の会合では、従来の原発の耐震審査に批判的だった東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)も調査団のメンバーとして参加。活断層の定義について「研究者によってばらつきがある。実際に調査して、将来動く可能性があるというだけでいい」と指摘した。
規制委は来月から活断層の疑いがある原発周辺の調査に着手。11月2日の大飯原発を皮切りに、北陸電力志賀原発(石川県)など計6カ所で調査する。
規制委の田中俊一委員長は「活断層であることが判明すれば、(原発の運転を)止めてもらう」と話している。
http://sankei.jp.msn.com/science/news/121023/scn12102323560001-n1.htm
活断層か否かの判断あるいは定義は、人により異なるとしても、「3・11」以後において、「比較的確認しやすい」という条件で、ごく短い期間だけに限定することは、素人が考えても如何なものか、と思う。
野田政権は、政治判断で大飯原発再稼働を強行した。
⇒2012年4月 4日 (水):「大飯原発再稼働」の政治判断?/原発事故の真相(24)
⇒2012年4月13日 (金):拙速に過ぎる政府の大飯原発再稼働判断/原発事故の真相(26)
⇒2012年4月28日 (土):活断層の上の原発/花づな列島復興のためのメモ(57)
その政治判断が、如何に根拠のない情緒的なものであるか、もしくはアメリカの要求に屈したものであるかが分かる。
⇒2012年9月15日 (土):「言うだけ」感を拭えない政府の脱原発政策/花づな列島復興のためのメモ(142)
田中委員長の「活断層であることが判明すれば、(原発の運転を)止めてもらう」というのは、規制委の委員長として、如何なものか?
論理が逆立ちしている。
当然、「活断層でないことが判明するまで、止めてもらう」であるべきだろう。
野田首相が任命責任を問われるのは、田中法相だけではない。
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