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2012年10月 9日 (火)

山中伸弥京大教授のノーベル賞受賞/花づな列島復興のためのメモ(148)

山中伸弥京大教授が、今年のノーベル医学・生理学賞を受賞した。
次の日本人ノーベル賞候補の本命とされていたとはいえ、やはり格別の賞である。
率直に喜びたい。
特に、 「3.11」により大きなダメージを被った後である。
アメリカの占領下にあった1949年に、湯川秀樹博士がノーベル物理学賞を日本人として初めて受賞した時に似ているような気がする。

私は、湯川博士受賞のニュースのリアルタイムの記憶はないが、その時代の雰囲気は知っている。
無謀な戦争に敗れ、彼我の国力差、なかんずく科学技術力の格差に打ちのめされていた時である。
何しろ、ほんの数年前まで、天皇が現人神として、絶対的な権力・権威を持っていたのである。
教科書には墨が塗られ、それまでの生き方の拠り所を失って、何を立国の方針にすべきか五里霧中といった感じの時期である。
そんな中でのノーベル賞受賞のニュースが、復興中の日本にとって大きな励ましになった。

湯川博士の次の受賞者は朝永振一郎博士で、1965年のことだ。
この間、16年を要しており、湯川博士の名はノーベル賞とワンセットだった。
ちなみに、湯川博士と朝永博士は、共に理論物理学者であるが、旧制三高・京大の同期生でもあった。
2人が学んだ赤レンガの建物は、後に工学部燃料化学科の教室として使われ、日本人初の化学賞を受賞した福井謙一博士の授業が行われていた。
不思議な因縁である。

私は高校時代に、朝永振一郎博士の講演を聞いたことがある。
まだ上述のように、「ノーベル賞といえば湯川」の時代であって、専門家の間では朝永博士は有力な候補者だったのだろうが、田舎の高校生にとって、間もなくノーベル賞を受賞することになるということは想定外だった。
ただ、もの静かではあるがユーモラスな話しぶりの人柄に魅了された覚えがある。

その後、日本人の受賞者も漸増し、ノーベル賞の衝撃度は薄らいできたように感じられる。
ノーベル賞は、総合的な国力の指標ともいわれるから、ある意味で当然のことであったが、「3.11」によって科学技術による信頼性が揺らいでいたことを考えれば、タイムリーな受賞であった。
⇒2010年7月19日 (月):人間にとって科学とはなにか/梅棹忠夫さんを悼む(7)
⇒2011年7月27日 (水):大阪万博パラダイム/梅棹忠夫は生きている(2)

山中教授の業績はマスコミ等で紹介されているが、以下の文部科学省のサイトを越えるものではないようだ。

Photo 
 平成19年11月,京都大学の山中伸弥教授は,ヒトの皮膚細胞から神経・骨・内臓など様々な細胞・組織に分化する能力を持つ「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」の作製に成功したと発表しました。これは,18年8月に発表されたマウスでの成功に次ぐ,世界で初めての成果です。
 私たちの体は,一個の受精卵が,神経,心筋,軟骨等の様々な組織の細胞に分化してできています。細胞が人体を構成する様々な細胞へと分化できる能力を多能性と呼びますが,一度,皮膚などの組織に分化した体細胞は,通常多能性を失いその組織以外の細胞にはなれません。しかし,山中教授らは多能性を失ったヒトの皮膚細胞に,4つの遺伝子(後に3つでも可能であることを示した)を導入して多能性を回復させることに成功しました。
 今回の研究が更に進むと,患者の細胞から,神経や筋肉など様々な組織の細胞を作製することが可能となります。得られた組織は皮膚損傷,脊(せき)髄損傷,若年型糖尿病,心筋梗塞(こうそく),白血病,骨粗鬆(しょう)症等の疾病を治療する再生医療(細胞移植療法)に用いることができます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab200701/002/006/001.htm

生物の身体が細胞分裂により成長・発達することはよく知られている。
また、それは進化の過程をなぞるようだとも言われている。
その成長・発達の過程あるいは進化のプロセスは、非可逆的と考えられる。
しかし、山中教授は、それを振り出しに戻す(初期化)する方法に成功したということだ。

まさに凡人には考え及ばない、コペルニクス的な発想の転換である。
しかし、その影響の大きさは、上記の文科省の説明にあるように、業績発表の平成19年11月から5年足らずでのノーベル賞受賞であることからも窺い知れる。
もちろん、実用化までにはいくつもの困難な課題があるだろうが、日本復興の烽火と受け止めよう。

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