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2012年10月20日 (土)

象徴としての八ッ場ダム/花づな列島復興のためのメモ(153)

国土交通省が建設を進めている八ッ場ダムは、最初に計画が発表されたのが、1952(昭和27)年だというから、60年前のことになる。
また、計画の直接的な契機となったのは、利根川流域に大きな災害をもたらした昭和22(1947)年のカスリーン台風であるから、それから数えれば65年の歳月が過ぎている。

計画が遅々として進捗しない間に、時代は大きく変化した。
ダムの必要性そのものに疑問符が付けられたのである。
政権交代総選挙における民主党のマニフェストでは、公共事業の「ムダ」として「川辺川ダム」「八ツ場ダム」が明記され、事業中止とされていた。
2009年9月12日 (土):八ツ場ダムの入札延期 その1.計画の現況

八ッ場ダムj計画の是非については賛否両論が鋭く対立している。
国土交通省は、利根川水系の治水計画の要として位置づけている。
民主党にとっては、政権交代の大義である。

計画が発表されると、地元住民を中心に激しい反対運動が起きた。
紆余曲折の結果、昭和60(1985)年に計画を受容することになったが、補償の条件等が難航し、ダム本体工事が遅延しているところで、政権交代が起きた。

地元住民からすれば、長年翻弄された上に結局中止になるということでは、「今までの苦労は何だったのか?」と思うだろう。
1都5県の受益自治体も、既に相応の支出をしており、中止には反対という姿勢を明確にしている。
結局は、有識者会議にゲタを預けることになった。
しかし、有識者会議でもなかなか結論は出ないようである。

 八ッ場ダム(長野原町)本体工事着工の条件である利根川水系の河川整備計画の策定に向け、第7回利根川・江戸川有識者会議が16日に東京都内で開かれた。ダム建設の根拠となる「目標流量」についての議論で一致点が見られず、座長の宮村忠・関東学院大名誉教授は議論をいったん打ち切り、八ッ場ダムなど個別の整備内容の検討に入る方針を示した。
 目標流量は、1947年のカスリーン台風並みの水害があった場合、被害が出ないようダムなどで調節すべき流量のことで、国土交通省関東地方整備局は毎秒1万7000トンと算出している。これに対し、複数の委員が根拠資料や算出モデルの不整合性を指摘していた。

http://mainichi.jp/area/gunma/news/20121017ddlk10010151000c.html

こんな折に、国土交通省が会議に提出した資料に、重大な疑惑があることが指摘されている。

 この氾濫図は昨年六月、国交省が日本学術会議分科会の資料として作成し、ダム本体着工の条件である「利根川・江戸川河川整備計画」の策定に向けた有識者会議にも示された。一部の委員から「捏造(ねつぞう)した氾濫図」として撤回を求める意見が出ている。ダム建設の根拠となる治水の必要性の議論に影響を与えそうだ。
 氾濫図で示された上流域は、烏川や鏑川(かぶらがわ)が流れる高崎市、鮎川の藤岡市、利根川右岸の玉村町など。
 実地調査した有識者委員の大熊孝新潟大名誉教授によると、氾濫図にある氾濫地域(青色)のうち、烏川左岸の高崎市役所や高崎駅がある市街地部分は川から十メートルを超える高台で、鏑川左岸の上信電鉄の西側は標高約二百メートルの山間部だった。
 さらに鮎川や烏川と鏑川が合流する辺りの右岸の一部を除き周辺のいずれも浸水していなかった。玉村町のほとんどが氾濫したことになっているが、半分以下しか浸水していなかったという。
 整備局は有識者会議で氾濫図について「群馬県発行の『水害被害図』と『カスリン颱風(たいふう)の研究』に記録された浸水の深さを基に、見取り図的なひずみを現在の地図の正確な位置で補正して作った」と説明。現地での地形確認や聞き取り調査は行っていなかった。
 建設省(現国交省)は一九七〇年、カスリーン台風の利根川上流域における洪水被害の実態をまとめ、氾濫図を作成した。今回新たに作成された氾濫図では氾濫地域が大幅に拡大している。
 下流の治水基準点・八斗島(やったじま)でカスリーン台風の洪水時、整備局の推計で最大毎秒約一万七千立方メートルの水が流れ、新たな流出計算モデルでは同約二万一千立方メートルの水が出た(最大流量)としている。差の同約四千立方メートルが上流域で氾濫などしていたとする。
 大熊委員は「国は最大流量をかさ上げするために、つじつま合わせで、上流域で大規模な氾濫が起きたように捏造している。氾濫水量は八分の一程度ではないか」と批判する。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012101902000134.html

八ッ場ダムは、専門家の間では、必要だという意見が強い。
たとえば、東京大学名誉教授の虫明功臣氏は、『八ツ場ダムは本当に無駄なのか-治水と水資源の観点から考える』(「正論」09年12月号)という論考で、啓蒙的に八ッ場ダム擁護論を展開している。
⇒2009年12月 8日 (火):専門家による「八ツ場ダム計画」擁護論(4)八ツ場ダムの治水上の意義

私は八ッ場ダムの仕事に携わった人たちと個人的な面識がある。
⇒2009年9月17日 (木):八ツ場ダムの入札延期 その6.華山謙さん
⇒2009年9月19日 (土):八ツ場ダムの入札延期 その8.奈良忠さん

有識者会議の座長・宮村忠関東学院大名誉教授、国土交通省の資料に批判的な意見を表明した大熊孝新潟大名誉教授、虫明功臣東京大学名誉教授は、共に東京大学の河川研究室の大学院で学んだ人たちである。
八ッ場ダムは、これからの国土のあり方を考える上で避けて通れない問題であり、河川工学・河川行政のあり方の象徴である。。

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