黒曜石の産地を訪ねる
星糞峠というのは妙な名前と言っていいだろう。
「星」と「糞」はミスマッチのような気がする。
その星糞峠の付近が、有名な黒曜石の産地であって、「黒耀石体験ミュージアム」という施設がある。
表記が、黒「耀」石であり、「曜」ではないのは何故か?
黒曜石か黒耀石かについて、Wikipedia に次のような解説がある。
黒曜石とも黒耀石とも表記される場合がある。「耀」の字が常用漢字外であるため、慣用的に黒曜石と表記したと言われることがあるが、常用漢字の制定以前から黒曜石の表記はあった。安永2年(1773年)に初めて黒曜石を取り上げた木内重暁の『雲根誌』では黒曜石としており、Obsidian の訳語として採用した和田維四郎も黒曜石としている。黒耀石という用字が現れるのはおそらく太平洋戦争後で、藤森栄一など考古学者の一部が好んで用いる。
黒耀石という表記は、光り輝くイメージを伝えたいということであろう。
同様の趣旨で、黒「燿」石という表記も用いられている。
先日、近所の100均で買った『日本の歴史事典』の「旧石器文化と縄文文化」の項に、以下のような記述があった。
各地で交易が行われていたことが、狩猟用石器の原料である黒曜石の出土などから分かる。その産地は長野県和田峠など数カ所に限られるが、かなり離れた土地でも黒曜石で作られた石鏃が見られるからだ。
黒曜石の交易圏については、以前に少し触れたことがある。
⇒2011年6月30日 (木):黒曜石の産地と利用地/やまとの謎(32)
下図の赤丸の場所、中山道がヴィーナスラインと交差するあたりが和田峠である。
「黒耀石体験ミュージアム」は、ふるさと創生事業で建造されたとかで、山の中のある立派な施設だ。
長野県小県郡長和町大門という場所である。
となりに、明治大学黒曜石研究センターがある。
ペンションオーナーのお嬢さんが小学6年生のとき、新聞コンクールで大賞を受賞した作品が展示してある。
沼津市は黒曜石と縁が深い。
沼津市文化財センターの学芸員池谷信之さんは、「黒曜石考古学」という分野を開拓した功績で、日本考古学協会大賞受賞という栄誉に輝いている。
遺跡の出土品の一部という位置付けにすぎなかった黒曜石に価値を見いだして18年。常識を覆す「全点分析」の手法で黒曜石考古学を一分野として確立したことが評価された。 池谷さんは、旧石器時代や縄文時代に刃物として使われていた黒曜石の産地分析を通じて、当時の人々の生活や社会背景を研究している。「切り開いた分野が認められたことがうれしい」と受賞を喜ぶ。
http://www.47news.jp/localnews/shizuoka/2011/06/post_20110624161855.html
また、沼津高専の物質工学科望月研究室は黒曜石研究で有名である。
⇒2011年6月26日 (日):沼津は黒曜石研究のセンター
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コメント
こんにちは。
なんか「黒曜石」がらみの研究は、わくわくしますね。
ここのミュージアムも行ってみたいです。
明治大学の施設もあるようですが、以前、御茶ノ水の明治大学の博物館でたまたま「黒曜石」の研究成果が発表されていたので、興味深く拝見しました。
きっと長野のセンターの成果を、持ってきたんでしょうね。
投稿: kimion20002000 | 2012年9月20日 (木) 09時18分
kimion20002000様
コメント有難うございます。
明治大学の考古学教室は、優れた研究者を輩出していますね。黒曜石は、石器の中でも、特に人々の関心を集めたのではないでしょうか?
黒曜石の交易圏は驚くほど広いようで、優れた材料はいつの時代でも、重要な資源だと感じました。
ミュージアムは、冬場はスキー場になっているであろう一角にあります。
投稿: 夢幻亭 | 2012年9月20日 (木) 12時00分