「東大話法」では包み隠せない民主党政権の「三百代言」/花づな列島復興のためのメモ(143)
「三百代言」という言葉がある。
広辞苑の説明は次のようである。
さんびゃく‐だいげん【三百代言】
①明治前期、代言人の資格がなくて他人の訴訟や談判を引き受けた者。また、弁護士の蔑称。木下尚江、良人の自白「弁護士が可いいと言ふじやありませんか、阿母おっかさんは―と一つになさるから不可いけないワ」
②転じて、詭弁きべんを弄すること。また、その人。
広辞苑第六版より引用
枝野経産相兼原子力損害賠償機構担当相は、弁護士であり、野田政権では、内閣法制局長官に代わって、憲法及び法律解釈も担当している。
政権における法律の専門家と言って良い。
政府が「革新的エネルギー・環境戦略」を決定した直後である。
⇒2012年9月15日 (土):「言うだけ」感を拭えない政府の脱原発政策/花づな列島復興のためのメモ(142)
その根幹である「2030年代に原発稼働ゼロを可能にする」という方針と両立し得ない言動が、早くも枝野経産相の口から出た。
政府が自ら掲げた「二〇三〇年代に原発稼働ゼロ」が早くも迷走を始めている。青森県の三村申吾知事らと青森市内で十五日に会談し、電源開発大間原発(同県大間町)など建設中の三原発について、建設継続を容認する考えを示した枝野幸男経済産業相。これらの稼働が認められれば、運転から四十年で廃炉にする政府原則を適用しても、五〇年代までは原発が稼働し続けることになる。
枝野氏は会談で「経産省としてはすでに建設許可が与えられた原発について、変更することは考えていない」と明言。枝野発言は新しい原発の稼働に事実上のお墨付きを与えたといえる。
三〇年代に原発ゼロを実現するには、運転四十年の「寿命」を迎える前の原発を廃炉にする措置が必要だが、新たな原発が稼働すればその実現はますます困難になる。
全国で建設計画のある原発は十二基。このうち、着工済み原発の進行状況は、大間原発が37・6%、中国電力の島根3号機(松江市)が93・6%、東京電力の東通1号機(青森県東通村)が9・7%。いずれも東電福島第一原発事故を受けて、自主的に工事を中断している。
政府は十四日に示した「革新的エネルギー・環境戦略」で、原発は新増設しないことを明記したが、建設中の三原発の扱いについては明らかにしていなかった。枝野発言を受け、電源開発は「より安全な発電所となるよう全力を挙げる」とのコメントを発表し、大間原発の建設を推進する考えを示した。
会談後、記者団にゼロ目標との矛盾を問われた枝野氏。だが、「ゼロが可能となるよう、あらゆる政策資源を投入するということ」と述べるのみで、何の説得力ある方策を示すこともできなかった。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2012091602000116.html
人間が他の動物と異なる大きな特徴の1つが、言語の使用である。
福島第一原発事故が発生した当初、官房長官だった枝野氏が、「ただちに影響はありません」をしきりに繰り返したのは多くの人が忘れられないであろう。
現実には、原子炉はメルトダウンし、大量の放射性物質が飛散して。今なお住んでいた所に帰ることが出来ない故郷喪失者が多数いる。
枝野氏が発する言葉は、いわゆる「東大話法」の典型例であると思う。
⇒2012年7月16日 (月):枝野経産相の責任を問う/花づな列島復興のためのメモ(112)
「東大話法」の造語者・安冨歩氏の近著『もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く』講談社+α文庫(1209)の案内文から。
「徹底的に不誠実で自己中心的でありながら、抜群のバランス感覚で人々の好印象を維持し、高速事務処理能力で不誠実さを隠蔽する」――日本社会の支配層が駆使する欺瞞と無責任の「東大話法」。その規則は以下の通り。
1 自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する
以下省略
その枝野氏が、経産相として原発推進政策の一翼を担っている。
事故が起きても、権力者としての立場には変わりはない。
私などは、ずいぶんタフな精神構造の持ち主だなあ、と思うが、この人が大臣の椅子に座っていること自体が、民主党政権の本質を表しているのではなかろうか。
政策の整合性などは、どうでもいい。その時、その場を切り抜ければ良し。
すなわち、「三百代言政権」である。
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